数多ある企業の中で、とりわけ「ブランド価値の高い企業」とは、いったい、どこになるのだろうか?
このほど、日本最大のブランディング会社であるインターブランドジャパンにより、ブランドの持つ価値を金額換算する独自のブランド価値評価(Brand ValuationTM)手法を用い、日本発のブランドを対象としたブランド価値ランキング「Best Japan Brands 2020」が発表された。
今年で12回目の発表となるBest Japan Brands 2020は、本年度より、日本の「Global Brands」(海外売上高比率30%以上)、「Domestic Brands」(海外売上高比率30%未満)の2つのランキングを一本化したTop100ブランドのブランド価値金額ランキングとなる。
ランクインブランド数は、昨年までの「Global Brands」40、「Domestic Brands」40の合計80ブランドから、100ブランドに拡大し、より多くのブランドが評価されている。
Best Japan Brandsは、インターブランドが2000年より毎年発表するグローバルのブランド価値ランキングBest Global Brands と共通の評価方法を用いており、同じモノサシでみたグローバルのリーディングブランドと日本ブランドの価値を比較することで、世界基準で、ビジネスの資産としてのブランド価値を考察する。
Best Japan Brands 2020概況
ブランドは、これまで以上にめまぐるしく変化する環境の中に置かれている。顧客の潜在的なニーズに耳を傾け、その期待に応えること、またはその期待を超えるブランド体験を提供することで、ビジネスに効果をもたらすこと。それらの活動の実践が、企業の持続的な成長の実現の鍵となることが顕著になっている。
昨年秋発表したグローバルブランドのランキングBest Global Brands 2019全体のブランド価値合計金額の対前年成長率は+5.6%。これに対して、Best Japan Brands 2020のうち昨年もランクインした80ブランドの対前年成長率は+0.9%に留まっており、日本ブランドの成長が劣後する結果となった。
また、Best Japan Brandsのうち、海外売上高比率30%以上の「Global Brands」のブランド価値合計金額は対前年比+2.5%、「Domestic Brands」(海外売上高比率30%未満)のブランド価値合計金額は対前年比-2.7%となった。日本のTop100ブランドに、57の「Global Brands」が名を連ねており、「Global Brands」が日本のブランドの成長を牽引している。
本ランキングで成長率の高いブランドに共通する点は、Shiseidoの「SHISEIDO FOREST VALLEY」、Nintendoの「Nintendo TOKYO」、BANDAI NAMCOの「バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル」、KOSÉの「メゾンコーセー(Maison KOSÉ)」など顧客のブランド体験を重要視した活動が見受けられること。
顧客が、リアルに、そのブランドの世界観を体験することを通して、ブランドへの理解を深め、ブランドに対する愛着や共感を得ることで、ロイヤリティを構築することに成功している。顧客が真に求める期待に応える、またはその期待を超えるブランド体験の提供が、ブランド価値の向上に寄与している。
ランキング全体を業種別でみると、金融ブランド(12ブランド)、「小売」関連ブランド(11ブランド)、自動車ブランド(10ブランド)、エレクトロニクスブランド(10ブランド)、「化粧品・トイレタリー」関連ブランド(7ブランド)で、ランキング全体の半分の50ブランドを占めている。
昨年に続き、化粧品・トイレタリー関連ブランドの成長が顕著で、最も成長率の高かったShiseido(17位、前年比+23%)、成長率が5位のKOSÉ(37位、前年比+14%)、そしてKao(20位、前年比+9%)などが、ブランド価値を拡大させている。
高いブランド価値を持つ「Domestic Brands」には、NTT DOCOMO、SoftBank、auなど通信業界のブランド、Suntory、Asahi、Kirinなど食品業界のブランドが続く状況となっている。
■Best Japan Brands2020 (1-50位)
Top5 Growing Brands(前年比ブランド価値成長率 Top5)
■Shiseido(17位、前年比+23%)
Shiseidoは、2019年に新たな企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD (ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」を制定。シンガポールの「ジュエル・チャンギ・エアポート」でのイノベーティブな体験空間「SHISEIDO FOREST VALLEY」などで具現化。顧客のブランド体験・体感を重視した活動は、ブランド価値向上に大いに貢献している。また、ブランドの選択と集中による「SHISEIDO」を中心としたプレステージブランド戦略も、売上・利益に寄与している。
■Nintendo(10位、前年比+18%)
Nintendoは、これまでにないエンターテインメント体験を創造することに挑戦し、「人々を笑顔にする娯楽をつくる会社」を目指している。スマートデバイス上でのゲームビジネスを展開すると同時に、テーマパークや映像コンテンツなどにも進出し、より多くの顧客がNintendoのキャラクターやゲームに触れることにより、ブランド価値の向上を図ろうとしている。「娯楽は他と違うからこそ価値がある」という「独創」の精神のもと、顧客の期待を超える商品やサービスを提供している。
■BANDAI NAMCO(65位、前年比+18%)
中期計画の2年目を迎えたBANDAI NAMCOグループは、昨年に続き、4つの重点戦略(IP軸戦略・事業戦略・エリア戦略・人材戦略)に基づいて、様々な取り組みを展開。特に、IP(キャラクターなどの知的財産)軸戦略に関しては、「機動戦士ガンダム」の40周年プロジェクトや、「バンダイナムコエンターテインメントフェスティバル」を通じて、BANDAI NAMCOならではのブランド体験を提供。さらに新たなネットワークプラットフォーム「VR ZONE(VR施設)」など、今までになかった「新しい遊びの世界」を提供するブランドを体現し続けている。
■Yamaha(32位、前年比+15%)
Yamaha (ヤマハ株式会社)は2019年にブランドプロミス「Make Waves」を制定し、お客様が自ら一歩を踏み出すきっかけになりたいとの想いを込めてグローバルに展開している。新中期経営計画ではブランド訴求による顧客接点の強化を謳い、非財務目標の一つにコーポレートブランド価値を掲げるなど、ブランドを軸にした経営を推進している。
Yamaha Motor(ヤマハ発動機株式会社)では各事業や拠点の強みを生かした独自ブランディングアプローチのAutonomous Branding戦略を展開。両社の共同施策として創立記念日をYamaha Dayと定め、コラボを含めたイベントなどを通じて従業員のブランド意識をグローバルに向上させている。
■KOSÉ(37位、前年比+14%)
売上・利益ともに好調で過去最高を更新。アジアが成長を牽引し、中長期ビジョンに掲げるグローバルレベルでのさらなるブランド力強化が順調に進行している。ブランドでは、ハイプレステージのコスメデコルテが全体の成長を牽引している。
また、デジタルxコスメの新コンセプトストア「メゾンコーセー(Maison KOSÉ)」、コーセーBeautyフェスタ、カウンセリング販売、エステ・トリートメントによる施術など、顧客接点で一貫したブランド体験を提供している。
New Entrants(ランキング入り)
■Seven-Eleven(18位)
Seven-Elevenは、日本で独自の進化を遂げてきた「コンビニエンスストア」ブランドとして、今回より「日本ブランド」として本評価の対象となった。日本のコンビニ市場での売上は第一位。特に、高品質なプライベートブランドが顧客の高い評価を得ている。
また、他ブランドに比べて、ヘビーユーザーが多く存在し、ブランドへのロイヤリティが高いのも特徴。従業員や店舗オーナーに「近くて便利」というブランドのスローガンが浸透しており、「中食」やネットプリントサービスなど、そのスローガンを具現化する商品やサービスに果敢に取り組んでいる姿勢もブランドの価値に寄与している。
■HOYA(50位)
HOYAグループ連結の売上・利益ともに過去最高を更新。眼科医療機器メーカー米国Mid Labs社及び独国Fritz Ruck社の買収を行うなど積極的に事業拡大を進行。業界トップクラスのグローバルシェアを誇っている。HOYAは「創造と革新でニッチな市場におけるリーディングカンパニーになる」ことを宣言。それぞれの製品・サービスが社会になくてはならない存在となることを目指し、顧客の声に耳を傾けた製品を開発し、その独自性、存在感がブランド価値に寄与している。
■KEYENCE(55位)
KEYENCEは「付加価値の創造」を掲げ、世の中に送り出す製品の7割が「世界初」「業界初」を実現。顧客の現場に足を運び、悩みを聞き、隠れたニーズを掘り起こすコンサルティング営業と革新的な製品開発技術力により、顧客の満足度向上と、業界の市場トレンド、需要予測を可能にし、過去25年間の平均成長率は+10%超となっている。製品開発における3つのこだわりは「より小さく」 小型化・高耐久化、「より強く」 商品のロングライフ化、「より速く」ライン稼働スピードの向上。徹底的な顧客中心主義と独自のこだわりによる差別性がブランド価値を押し上げている。
■Pigeon(64位)
「愛」を経営理念に掲げ、「愛を生むは愛のみ」(愛のこもった製品・サービスを生むのは、愛の心のみ)を社是とし、「Global Number One の育児用品メーカー」を目指している。2019年に存在意義(purpose)「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」を定め、赤ちゃんの目線に立った製品作りを徹底し顧客満足度を高めている。特に主力商品である哺乳瓶への信頼性、ニーズへの対応力、存在感が、国内のみならず特にアジア地域において高く、ブランド価値を向上させている。
■Murata(70位)
Murataブランドの特徴は、人(従業員、顧客)への注力と、非常に高い従業員のMurataブランドへのコミットメント。長期ビジョン(Vision2025)においても「世界中の従業員がつながることでイノベーションを起こし、新たな価値を創造する。」と掲げ、中期構想2021でも重点分野として「人と組織と社会の調和」としています。Murataのコンピタンスを、「グローバルネットワークと顧客層の厚み」、「技術開発力」、「モノづくり力」とし、これらの強みを纏め上げているのが、Murata従業員の「組織連携力」と定義。「地域の喜びであり、誇りであるように。」という独自の理念がブランドを強化している。
■Asahi Kasei(77位)
Asahi Kaseiグループは「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します」をグループ理念とし、「昨日まで世界になかったものを。」をグループスローガンに、イノベーションを起こし続けることを使命としている。それを体現した一つが、Asahi Kaseiの名誉フェローである吉野彰氏のノーベル賞受賞。ブランドの基軸はそのままに、BtoB企業として市場に合わせて事業ポートフォリオを着実にシフトし続け、地道に盤石なブランド価値を蓄積している。
■KONAMI(89位)
経営理念として「『価値ある時間』の創造と提供」を掲げるKONAMIは、他のゲーム会社とは異なり、事業ポートフォリオに「業務用アミューズメント」「スポーツジム」を有することが特徴。従来関連性が見えなかったこれらのポートフォリオが、テクノロジーの進化により「eスポーツ」という一つの強力な事業として開花している。
この領域において強い存在感を獲得するため、「eスポーツ施設」などの整備を強化。ゲームメーカーブランドからグローバルeスポーツのリーディングブランドへと飛躍している。
■WORKMAN(94位)
「働く人たちに便利さを」をコンセプトにした作業服専門ブランドWORKMANは、安価で高機能である商品がネットの口コミで広がり、一般顧客も着用するアパレルブランドに変貌している。「WORKMAN」では、職人向け作業着・安全靴・レインウェアを、「WORKMAN Plus」では、一般向けアウトドア・スポーツ・レインウェアを展開。SNS上のブロガーやファンからの発信を利用した「アンバサダーマーケティング」を活用し、「ムダにカッコいい」などと評価されるデザイン性の向上を図り、「低価格」「品質」へのこだわりという差別性を維持している。
■Kewpie(100位)
2019年に創業100周年を迎え、日本ではマヨネーズの代名詞ともなっている存在感を有している。長年継承されるキャラクターやパッケージ、テレビの料理番組により、顧客との強いつながりを持っている。「体にやさしい商品」や「新しい料理、ライフスタイルや食べ方への提案」は、ブランドへの信頼感や共感をさらに向上させている。
出典元:株式会社インターブランドジャパン
構成/こじへい
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February 29, 2020 at 05:26PM
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