
米大統領選挙ではバイデン前副大統領が勝利を確実にし、対中政策の今後についても注目される。米中対立が経済・技術の覇権争いの様相を呈している以上、対中強硬姿勢は米議会でも超党派で共有されており、政権が代わっても継続されるとみる。一方、バイデン次期政権は欧州や日本など同盟国と協調しながら、人権問題などをめぐって中国に圧力をかけていくことが想定される。その場合、米国の対中制裁が西側同盟国などにも広がることで、米中デカップリング(分断)が地理的に拡大するおそれがある。
内需拡大を推進
中国政府としては、どちらが大統領となっても進むべき道は一つと考えていたのではないか。10月下旬、中国共産党の第19期中央委員会第5回総会(5中総会)が開催され、第14次5カ年計画(2021~25年)と35年までの長期目標の基本方針が採択された。新たな5カ年計画では、国内市場と国際市場をうまく連結させ、国内と国際の「双循環」が互いに促進しあう新たな発展構造を形成すること、そのためには「国内大循環」を主体とすることが明記された。厳しい国際情勢を背景に、中国政府は消費促進を中心とした内需拡大を進める方針だ。
新型コロナウイルス禍で世界経済が大きく落ち込む中、中国の景気回復のスピードが目立っている。20年7~9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比プラス4.9%と2四半期連続のプラス成長となった。世界全体ではGDPがコロナ前の水準に回復するのが21年後半と見込まれる中、中国は20年4~6月期に達成している。もっとも、これまでの中国経済の回復はインフラ投資と不動産投資が牽引(けんいん)。地方政府がインフラ関連事業などを目的に発行した専項(特別)債券の総額は20年1~10月で3兆5466億元(約56兆円)に達するなど記録的な積み増しとなっており、固定資本投資は公的部門に支えられた面が大きい。民間部門の固定資産投資は10月単月で再び前年同月比マイナスに転じている。
消費も名目小売売上高が8月にようやく同プラスに転じるなど、薄明かりがみられている。しかし足元の回復は、地方政府の消費喚起策に基づく自動車消費の増加によるところが大きい。1~9月の1人当たり実質可処分所得は前年同期比プラス0.6%と、所得環境は依然として弱い。雇用統計をみても、1~10月の都市部の新規就業者数は1009万人と前年同期を184万人下回っており、雇用創出も力不足だ。「双循環」の実現には雇用・所得環境の一層の改善が欠かせない。民間消費全体が自律回復に至るには時間を要しよう。
このように国内大循環を主体とした「双循環」の実現は一朝一夕にはいかない。専項債券のほか、地方政府傘下の投資会社「融資平台」による債券発行額は既に昨年を上回っており、中国経済は債務拡大というリスクを抱えている。国際金融協会(IIF)によると、中国の政府・企業・家計の債務総額は7~9月にGDP比337%に達している。債務拡大および米中デカップリングの拡大は中国経済にとって2つの大きなリスクであろう。
日本「新常態対応」を
米中デカップリングが地理的に拡大すれば、日本企業にとっても米国からの「同調圧力」に直面することが想定され、大きな試練となりうる。米中のデカップリングが拡大した場合、中国現地法人の売り上げが部分的にせよ、失われる可能性がある。そのインパクトを測るため、過去の対中直接投資のストック額から、現在の中国市場での西側諸国など(米国および「香港国家安全維持法」を施行した中国に懸念を表明した27カ国)の売上高を推計すると、中国との経済的結び付きの強い日本が最も高く2208億ドル(約23兆円)、次いで米国が1601億ドル。中国への輸出額(19年)は、同じく日本が最大で1718億ドル、米国が1229億ドルと続く。米国および27カ国全てを合わせると、外国企業の売上高6879億ドル、中国の輸入額7154億ドル、合計で約1兆4000億ドル規模に及ぶ。
日本としては米中対立の極度なエスカレーションを回避すべく、欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)などミドルパワー国との緊密な連携を取りながら、双方との融和的な関係の維持に努めることが重要だ。同時に、経済安全保障における「新常態」に備えた対応も求められよう。
【プロフィル】橋本択摩
はしもと・たくま 東大経卒。第一生命経済研究所、国際金融情報センター、三井物産戦略研究所などを経て、2020年2月に三菱総合研究所入社。政策・経済センター主任研究員。アジア新興国の経済分析を担当。43歳。埼玉県出身。
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November 23, 2020 at 05:28AM
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【中国を読む】バイデン政権で対米関係は 三菱総合研究所・橋本択摩 - SankeiBiz
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