
~工場編(20)
受刑148/384日目
台風が直撃
この日は静岡に台風が上陸したため、朝から雨や風が激しく、午後3時ころには大荒れとなり、作業を中止して早足で舎房に戻った。それでも入浴日なので、居室で一息ついたあと、隊列を組んで浴場に向かったが、その途中、「バチン」という大きな音がし、停電になった。
浴場も真っ暗であり、急きょ防災用のガソリン発電機が用意され、そこから電力をとって簡易のクリップライトに点灯し、排ガスと騒音、薄暗さの中で入浴を行った。全体で手早く済ますため、他の工場の受刑者と合同の「芋洗い」状態だったが、非常事態であり、警備隊の職員も興奮し、いつになく声を荒げていた。
舎房に戻る際にグラウンドを見ると、ベンチの上の日陰用のすだれが風で吹き飛ばされ、バラバラになってグラウンドを舞っているほどだった。舎房に戻ってもずっと停電したままで、全く復旧の兆しが見えず、夕食後の時間には居室内がほとんど見通せないほどの暗さとなった。
刑務官もバタバタと走り回っており、監視が手薄で、もしこのタイミングで自殺したら、間違いなく成功するだろうと思われた。当然ながらテレビはつかず、真っ暗な室内で本も読めず、書き物もできなかったため、あきらめて早めに布団を敷き、横になった。
くしくも、僕の電撃逮捕はちょうど1年前のこの日のことだった。夜半、大阪拘置所の自殺防止房に放り込まれ、悪臭が漂う布団の上に寝転び、目を閉じたあの夜のことを思い起こした。時が経つのは本当に早い。
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15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。
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1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。
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