バイデン大統領の初外遊での最初の首脳会談はジョンション英首相とだった。両首脳は、1941年にチャーチルがルーズベルトと結んだ大西洋憲章の現代版を発表し、米英共同声明には両国間の強い絆や協力部門が列挙されている。
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英国がBrexit後、ジョンソンが目指す「グローバル・ブリテン」のためにもアメリカとの関係強化を図らざるを得ないのは明らかだった。
バイデンにとっても、トランプ政権時代に壊された欧州諸国との同盟関係を修復する必要があった。そして米国のリーダーシップを発揮することを印象付けようとした。G7やNATOにおいても英米関係が最重要で、効果的なパートナーシップを組んできたのは間違いない。
バイデンが掲げる民主主義対専制主義の闘い、その中でも対中政策では欧州諸国の中で英国の立場が一番アメリカに近い。歴史や文化だけでなく、法の支配や人権擁護という点でも理念を強く共有する英国の強い支持が欠かせない。新大西洋憲章では民主主義と開かれた社会の原則や価値観、体制が再確認されている。
英国がアメリカにとって諜報・安全保障でも最も重要なパートナーであるが、NATO内やロシア、中国にも改めてそれを示した。英米共同声明で「21世紀の脅威を克服するために、世界で最強の英米の防衛、安全保障、諜報パートナーシップをさらに強化する」。さらに「強く原則に基づいたリーダーシップを発揮し、両国はNATOを集団的防衛の礎として未来の国際秩序を形成し確保する努力をする」と両国の多国間機構のなかでの協力体制を再確認した。
英国はフランスとともに欧州の核保有国であるが、フランスとは違い、アメリカと技術を共有し、核戦略で大きく貢献し、基地も提供している。アメリカにとって核保有国としての責務をともに分担できるのは唯一英国である。
英米間には、文化や歴史、人間的つながりだけでなく、機密や軍事、技術、経験の共有と努力の積み重ねで築かれてきた多層にわたる絆をバイデンやブリンケン国務長官、サリバン国家安全保障担当補佐官(NSA)も「特別な関係」として重視している。それを改めて英国に、そして世界にも示した。
英米サミットは成果も上げたが、中国をめぐる課題もあきらかだった。「民主主義対専制主義」の闘いの相手は主にロシアと中国だが、バイデン政権は人権以外、台湾や南シナ海など安全保障でも共同声明で中国への厳しい記載を求めていた。ジョンソンに対してはすでに3月には中国の一帯一路に対抗する構想を提案していた。しかし、英国をはじめ欧州内には対中政策に温度差があり、安全保障からインフラ、ハイテクまでを含め中国と対峙する構想に欧州が賛同することは不可能な中、英国がとりまとめたのが敵対的姿勢を前面にだすのでなく、民主主義国家がより魅力的な社会を提供するという“Build Back Better for the World”(B3W)構想である。
G7閉会時の記者会見でジョンソンは中国を口にしなかった。またB3Wを支える資金の負担や具体的な目標などは明らかになっていない。中国が貧困国のインフラに巨額の投資をしているのに対抗し、気候変動、健康、技術、ジェンダー平等面の施策を練る委員会設立が決まったものの、成果を出すまでには時間がかかりそうである。
欧州内では対中姿勢で一番アメリカに近い英国でさえ中国に対峙するのは楽ではない。キャメロン政権時にかなりの親中政策をとったのを、ジョンソン政権で徐々に変更された。英企業へのハッキングや対中投資における障害、そして英中合意に反しての中国の香港政策が大きな転換点となった。
しかし、中国の対英投資は1430億ポンドにおよび、投資先にはヒンクリー原子力発電所、ヒースロー空港、HSBC、アストラゼネカをはじめ多くの有力企業、学校も入っている。英国が中国に脅される材料はたくさんある。バイデン政権が今後英国の対中依存をどれだけ変えられるかは、EU諸国の対中姿勢にも影響するだろう。
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