森が住宅地や農地に転換されて、人間の居住地が野生動物の生息地に近づいている。こうした変化によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような人獣共通感染症の発生に拍車がかかると懸念されている。コウモリがたくさん生息していながら大規模な開発が行われてきた地域は、次のコロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の発生地になる可能性があると考える研究者もいる。
ある研究グループが、重症急性呼吸器症候群(SARS)に関連するコロナウイルス感染症のアウトブレイク(集団感染)が将来発生する恐れのある地域を識別し、5月31日付けで学術誌「Nature Foods」に発表した。研究者たちは、アジアに生息するキクガシラコウモリ属の生息密度が高く、森の分断と人間および家畜の居住が進んでいる地域を調査した。キクガシラコウモリ属は、最も多種多様なコロナウイルスの宿主だ。
ホットスポット(集団感染の発生地)になりうる場所を特定することは、「新たな新型コロナ感染症のパンデミックが発生するリスクをどう減らすかを考える助けになるでしょう」と、論文の著者の1人で、ニュージーランド、マッセイ大学で感染症生態学を担当するデビッド・ヘイマン教授は話す。
研究者たちは独自の基準に基づいて、キクガシラコウモリ属が高密度に生息している1万カ所以上、2850万平方キロメートル(日本の面積の約75倍)以上を分析した。アジアのキクガシラコウモリ属は、熱帯と温帯に生息する。
その結果、最もホットスポットとなる危険性が高い地域が中国で確認されたが、日本、タイ、フィリピンを含むアジアの他の地域やヨーロッパでも、ホットスポットになりかねない地域が見つかった。
研究者たちは、土地利用の変化を直接、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のまん延や新型コロナ感染症の発生に結びつけることはできないとしている。しかし、次のパンデミックを引き起こす可能性はあり、人間がコウモリの生息地に侵入することについて、もっと注意を払う必要があると主張している。
「異なる種の間で接触が増えるほど、種を越えて感染症が広がる機会は多くなることがわかっています」。コウモリから人間への感染もそのひとつだとヘイマン氏は説明する。分析では「現在、こうした状況にある地域」も特定されたという。
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