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Monday, July 6, 2020

金与正氏の浮上で南北関係はどうなるのか【コメントライナー】 - 時事通信

拓殖大学大学院客員教授・武貞 秀士

 2018年2月、ピョンチャン(平昌)冬季五輪の時に韓国を訪問した金与正氏は、文在寅大統領と親しく語り合った。それから2年、南北連絡事務所爆破を見た韓国では「金与正氏は、わずか2年余りで南北関係を破局に導く中心人物へと変わり果ててしまった」との声が上がった。

 しかし、金与正氏の微笑とどう喝、硬軟両様の手法は一貫していると見るべきだろう。金与正氏は、冬季五輪の時に、韓国大統領府の高官らを「金与正ファン」にしてしまった。手荒い手法でも、文大統領から嫌われることはないとの安心感があるのだろう。

 ◆実質ナンバー2

 内部的にも、金与正氏の「第一副部長」という肩書は、実質ナンバー2のポストだ。「党中央」であり、金日成主席の血筋を意味する「白頭の血統」の一人である。硬軟両様で対南戦略を遂行する任務を任されている。

 兄の金正恩氏よりも、政治センスがあるとの話もある。対南政策の中枢である労働党統一戦線部と軍総参謀部を統括しており、怖いものはない。

 金与正氏の自信たっぷりの表情と罵詈(ばり)雑言に込めたメッセージは、南と北だけが知る「波長」なのである。

 文大統領は困っている。南北間で信頼関係を築けば、朝鮮半島は統一に向けて進むと思っていたら、米国が許さない。米国に配慮をすれば、北朝鮮から絶縁状が飛んでくる。6月25日、朝鮮戦争開戦の日に向けた南北の「風船作戦」で、緊張が高まりつつある。

 北朝鮮が南北連絡事務所を爆破した直後の世論調査で、「文大統領の仕事ぶりを評価する」とした人が5ポイント減の55%、「評価しない」とした人は3ポイント増の35%だった。

 ◆軍事行動でなく「口撃」

 それでも、多数が文大統領を評価しているのは、驚くべき数字だ。文政権は「対米配慮をし過ぎて北朝鮮への協力が遅れてしまった」と反省しているだろう。

 文政権とトランプ政権の登場は北朝鮮にとり、千載一遇のチャンスだ。核兵器を持ったままの北朝鮮との対話を最優先したのだから。

 文政権はあと2年近く続くが、北朝鮮は文大統領の次も、文陣営から登場してほしいと願っていることだろう。そのためには、罵詈雑言と施設爆破だけでよいとは考えてはいないのだろう。

 「韓国発のビラに対抗するには、軍事力ではなく、北朝鮮から飛ばす1200万枚のビラで」というユニークなイベントを思い付いたのは、金与正氏だろう。北朝鮮は、軍事境界線付近に、宣伝放送用の拡声器の再設置を進めているという。

 冬季五輪での交流の経験を踏まえて、金与正氏が次の一手として選んだのは、軍事行動ではなく「口撃」だった。

 ◆中朝は一層緊密に

 「軍事衝突近し」「文政権は北朝鮮に対して強硬策に転じる」「北朝鮮は追い込まれて破綻する」「その北朝鮮を中国は見捨てる」という議論が盛り上がっている。

 しかし、6月20日、習近平国家主席の北朝鮮訪問1周年を記念して、中国は北朝鮮に対してコメ60万トン、トウモロコシ20万トンを贈った。北朝鮮の年間食糧生産高の2カ月分である。

 ポストコロナに向けて、中朝関係は一層緊密になっており、韓国は南北のこう着状態を打開するプランを準備中だ。中韓はポストコロナ時代に備えた人的交流を活発にしている。さて日本は?

 (時事通信社「コメントライナー」2020年6月25日号より)

 【筆者紹介】

 武貞 秀士(たけさだ・ひでし) 朝鮮半島の安全保障問題の第一人者。1949年生まれ。慶応大学大学院博士課程修了。防衛研究所で長年活動し、統括研究官。2011年の退官後、韓国の延世大学教授などを経て、19年4月より現職。米韓中と精力的に研究交流し、日本のテレビのコメンテーターとしても活躍。著書に「なぜ韓国外交は日本に敗れたのか」「東アジア動乱」など。

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