Research Press Release
Nature
2020年6月4日
Health: Changes in the global distribution of high cholesterol
1980年以降、血中コレステロール値の高い人が低・中所得国で増え、高所得国で減る傾向にあることを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。世界の1億人以上のデータを調査した今回の研究では、人々の食餌、行動、医薬品の使用状況の変化が、世界中で心疾患の最も重要な原因の1つである血中コレステロール値を左右していることが明らかになった。
血中コレステロール値が高いことは、心疾患と脳卒中の有意なリスク因子であり、高収入の欧米諸国の特徴と考えられてきた。これまでの研究では、総コレステロール値は調べられていたが、コレステロール関連心血管疾患のリスクを理解する上で重要なマーカーである高比重リポタンパク質(HDL)コレステロール値と非HDLコレステロール値は個別に分析されていなかった。
今回、全世界の約1000人の研究者のグループが、合計1億260万人の成人を対象とした1127件の研究のデータを分析し、1980~2018年のコレステロール値の世界的傾向を評価した。その結果、総コレステロール値と非HDLコレステロール値は、低・中所得国、特に東アジアと東南アジアで上昇し、高所得の欧米諸国、特に北西ヨーロッパ、中央ヨーロッパ・東ヨーロッパで低下したことが分かった。ベルギーとアイスランドでは、1980年以降、非HDLコレステロール値が最も大きく減少していた。一方、中国は、1980年に非HDLコレステロール値が最も低いグループにいたが、2018年には最も高いグループに入っていた。また、2017年には、非HDLコレステロール値が全世界の390万人の死亡の一因として関与しており、その半数は、東アジア、東南アジア、南アジアで起きていた(1990年には、わずか4分の1だった。)
著者たちは、これらの結果が、飽和脂肪から不飽和脂肪への転換に役立つ政策の採用と全世界での治療法の強化を促すことになると考えている。
doi:10.1038/s41586-020-2338-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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