【北京=三塚聖平】世界最大の温室効果ガス排出国の中国は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を舞台にバイデン米政権との関係安定化を模索する。米国が厳しい対中姿勢を示す中、気候変動分野は数少ない協力可能分野だからだ。
9月下旬には習近平国家主席が国連総会の場で、米政権が求める海外での石炭火力発電所の新設を行わない方針を表明。米側に歩み寄ったのは明らかだった。
王毅(おう・き)国務委員兼外相は9月上旬、ケリー大統領特使(気候変動問題担当)とオンライン形式で会談した際に「米国は気候変動協力を中米関係の『オアシス』にすることを望むが、その周辺が『荒れ地』になればオアシスもいずれは砂漠化する」と発言。気候変動の協力を交渉カードに、対中圧力解消を引き出そうとする思惑を隠していない。
ただ、中国の温室効果ガスの削減目標は「2060年までに実質ゼロ」で、米国など先進国が掲げる「50年までに実質ゼロ」とは開きがある。中国にさらなる削減目標の引き上げを求める声もあるが、国内事情を見ると簡単には応じられないとみられる。
今年9月以降、中国本土の約3分の2に相当する地域で電力不足に起因する停電や供給制限が起きている。火力発電用の燃料である石炭の価格高騰に加え、習政権が掲げた温暖化対策目標を達成するために、地方政府がエネルギー消費量の削減を一気に進めたことが響いた。
石炭火力発電は中国の主要電源であり、国内での急激な削減は経済成長へのダメージが避けられない。今月に入って中国政府は石炭の増産を求めており、既存の目標達成に影響を与える可能性すらある。
中国は、COP26で途上国という立場を強調して米国などの削減圧力をかわすとみられる。中国は「温暖化の進行は先進国に責任がある」と主張する途上国をリードする立場を巧みにとる。中国の気候変動問題担当特使である解振華(かい・しんか)氏らは今月19日の記者会見で、途上国が温暖化対応に必要とする資金や技術などへの支援を重視する考えを示した。
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