台湾海峡の緊張がこれまでになく高まっている。中国が今月、台湾周辺空域に軍用機を進入させるなどした挑発が最大の原因だが、対抗するように、米国やカナダの軍艦が今月中旬、共同で台湾海峡を通過。台湾有事の可能性すら排除できない危険な状況である。
中国は今月一日以降、百五十機以上の戦闘機などを台湾の防空識別圏に進入させた。台湾軍はその度に緊急発進で対応している。
台湾は最近、中国に続き環太平洋連携協定(TPP)に加盟申請したほか、米国は台湾との交流レベルの格上げと促進を図っている。中国の台湾威嚇はこうしたことへの反発もあろう。
党総書記三期目続投を狙う習近平国家主席の最大の狙いは、台湾問題で米国の干渉排除を徹底することである。習氏は九日の辛亥革命百十年大会の演説で台湾統一を「必ず実現する」と強調。「外部からのいかなる干渉も許さない」と述べ、軍事的威嚇の目的が「外国の干渉排除」にあることを自ら明確にした。
台湾の蔡英文総統は十日の演説で「現状維持が我々の主張だ」と冷静に従来通りの姿勢を示した。中国が自らの主張を押し通そうと一方的に現状変更のための軍事的威嚇を繰り返すのは乱暴すぎる。
台湾の邱国正国防部長(国防相)は今月初旬、「中国が二〇二五年には台湾に侵攻できる能力を持つ」と公言。その発言は、現在の台湾情勢の深刻さを物語る。
そうした事態に対応するため、米加両国は共同で軍事的威嚇に踏み切ったのかもしれないが、力を振りかざす威嚇の応酬は偶発的な台湾有事を招きかねない。
中国は一九九六年、台湾初の民選総統選で李登輝氏の当選を阻むため、軍事演習として台湾海峡にミサイルを発射。これに対し米海軍が空母機動部隊を派遣し、台湾海峡は一触即発の危機を迎えた。
現在の台湾情勢は一歩間違うと、それ以来最大の危機になりかねない。米中は意思疎通のための対話のチャンネルを確保しておくことが必要だ。日本も欧米諸国と連携し、中国の独断専行を抑制するための外交力発揮が求められる。
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