盛り土や建設残土の問題と併せて総点検が必要だ
土石流発生リスク回避の新たな動きが出てきている。全国規模で考えなければならない問題だ(写真:Yoshinori Okada/PIXTA)
土石流が静岡県熱海市伊豆山地区を流れ下った7月3日、上流部の森林を開いて作られた太陽光発電施設との関連を指摘する声がSNS上にあふれた。その後、静岡県の調べにより、谷あいに残土が持ち込まれて盛り土された場所が土石流の起点だったとわかり、“盛り土主因説”が浮上。“太陽光発電犯人説”は影を潜めた。
とはいえ、土石流発生メカニズムの解明は途上だ。傾斜地への太陽光パネル設置については、経済産業省が最近、規制を強化し、小泉進次郎環境相も規制区域の導入検討を示唆。土石流発生リスク回避の新たな動きが出てきた。
土石流起点での盛り土と太陽光
山津波とも呼ばれる土石流が家々をなぎ倒し駆け下る映像は衝撃的だった。いったいどこなのか。スマートフォンやタブレット端末でグーグルマップを見た人も多いはずだ。3日当時、マップ上には、「熱海市にて土砂災害発生」という文字の横に赤いビックリマークが出現。森が切られて山肌がむき出しになった長細い区域の下にあるマークは、あたかも土石流が始まった場所を示しているかのようだった。
このグーグルマップの画像は撮影時期が古く、現在、尾根の上の長細い区域には太陽光パネルが敷かれている。「メガソーラーが土石流の誘因となったのではないか」と示唆するツイッターも目立った。
ところが、静岡県が7月3日にドローンを飛ばして撮影、調べたところ、土石流の起点は長細い区域の端ではなく、その区域の北東に隣接する場所とわかった。県は、流れ下った土砂の量を計11万立方メートルと推計し、そのうち5.4万立方メートルは起点付近に積まれた盛り土だったとみた。
静岡県が発災日の7月3日、ドローンで撮影し、土石流の起点が判明した(写真:静岡県のドローン撮影動画より)
静岡県の難波喬司副知事は7月7日夕の記者会見で、
① 土石流起点付近の土地は、所有者だったA社が2009~2010年に土砂を搬入、盛り土工事を実施。静岡県の土採取等規制条例に基づき残土の処分を目的とする工事で、届け出では3万6000立方メートルを搬入するとしていた。盛り土の量はこの約1.5倍。
② 産業廃棄物(木くず)を残土に混ぜるなど不適切な行為が繰り返され、その都度、市が是正を求めた。
③ 2010年以降、盛り土の区域や量が拡大したとみられる。堰堤や排水溝が整備されていたとは思えない。
④ 2011年、この土地は個人が買い、所有している
――と明らかにした。
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