コモディティ化が進む市場のなかで、いかにメディアを活用していくかは重要な課題だ。洗剤やシャンプー、生理用品など、人々の日常生活に必要不可欠な商品を展開する花王では、宣伝担当者にどのようなスキルを求めているのか。デジタル化が進む時代の、宣伝部門の組織と人材育成について、マーケティング創発部門の立山昭洋氏に話を聞いた。
※月刊『宣伝会議』6月号(5月1日発売)では、「広告プランニングの新・潮流『新・メディアの教科書』」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。
マーケティング創発部門 メディア企画部長
立山昭洋氏
1986年花王入社。販売、マーケティング部門を経て2007年より広告宣伝部門で国内外のメディア調達、メディアプランニングを行う。2019年より現職。
ますます求められる専門性
「創発部門」として機能を集約
複雑化し、専門特化していくマーケティング活動。花王では調査、ブランディング、ブランドPR、表記・表示管理など、より高い専門性が求められるマーケティング機能を「マーケティング創発センター」として集約。このマーケティング創発センターのなかでメディアブラニングとバイイングに関わる「メディア企画部」の部長を務めるのが立山氏だ。
メディア企画部は「テレビメディア企画室」「クロスメディア企画室」「デジタルメディア企画室」の3つの機能で構成され、現在20代から50代まで25人程が在籍している。
2021年1月には中期経営計画に基づき「DX戦略推進センター」や「デジタル事業創造部」が設立されるなど、あらゆる領域でデジタル技術を活用した戦略を推し進める花王。
広告コミュニケーション領域も同様で、立山氏直下の「デジタルメディア企画室」がデジタルを活用したマーケティングミックスの企画・推進を担っている。
デジタルメディア企画室には、他社で広告運用に携わってきたデジタルマーケティングのプロフェッショナルを含めたデジタルメディア経験者が多数集結。ペイドメディアだけでなく、SNSや一部のオウンドメディア施策などに携わっている。
ますます専門性が求められるメディアプランニングの業務。特にデジタル領域は日進月歩の進化があり、常に最新情報のキャッチアップが求められる仕事。立山氏は「メディア企画部内で、それぞれが担当領域で高い専門性を発揮しながら成果を追求してきた」と話すが、「今後は、デジタルしかできない、マスしかできないという人材では通用しなくなる」との考えも示す。
花王の場合、立山氏のようなマーケティングやメディアの専門組織のメンバーが、各事業のブランド担当者とともに施策を企画・実行していく。そのため、マスやデジタルを網羅的に理解し、一人ひとりが「メディアプランナー」の役割を担うことが理想なのだという。
いま、同氏が課題としてチームメンバーに改めて掲げているのが、プランニングの全体設計の組み立て方だ【図表1】。メディアが複雑化しているからこそ、いちど基本に立ち戻り、各プロセスの明確なゴールを定める必要があると話す。
「マーケティング活動において、広告が果たすべき究極の目的は、顧客におけるブランドの価値形成を最大化することにあると考えます。実現のためには、高いロイヤルティを持っていただいている愛用者の方を増やすことが大事になります。認知し、購入いただくだけでなく、いかにロイヤルティを持っていただけるか。例えば、愛用者を10万人にしたいと目標を設定すれば、購入者は50万人…というように、定量的な目標とその実現のための行動を明確にし、ファネルの各ステージ別に必要な施策を企画する。容易なことではありませんが、そうした考え方を持つようにしてほしいと考えています」。
多くの人が各メディアに精通し、プランニングとバイイングの両面の知識を持てるように。テレビメディアとデジタルをつなぐクロスメディア企画室の設置やメディア横断的なプロジェクトを組むなど、できるだけ場数を踏めるような機会を設けるようにしているという。
ちなみに花王は、古くからインハウスの制作チームを抱えていることで知られる広告主企業だ。現在も広告制作チームには80名ほどが在籍。
このチームはマーケティング創発部門とは異なる部門に属している。当然、施策についての連携は行うが、役割は明確に分離。ただし、デジタルに関しては膨大な件数ということもあり、プランニングもクリエイティブもワンチームで進めることもある。
「広告が話題になるだけで終わってしまう」「SNSなどでバズっても、生産が追い付かない」…。情報環境が複雑化し、描いたシナリオ通りにならない状況だからこそ、精緻なプランニングを基に、事業全体を横断してマーケティングに携わることのできる人材が求められているのだ。
では、宣伝部門に必要なスキルと評価の仕組みづくりについてはどのように考えているのだろうか。
—本記事の続きは月刊『宣伝会議』6月号(5月1日発売)に掲載しています。
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