今月、街頭で選挙運動のチラシを配っていたアベル・ムリエータ候補は、白昼堂々、至近距離から射殺された。メキシコでは近年では指折りの血なまぐさい選挙戦が展開されており、候補者が殺害される例はこれが初めてではない。
死亡したムリエータ候補は、6月6日に行われる中間選挙に向け、メキシコ北部ソノラ州にあるシウダード・オブレゴン市の市長に立候補していた。シウダード・オブレゴンはアルバロ・オブレゴン元大統領にちなんで名付けられた都市だが、オブレゴン氏自身も2期目の大統領職に就く直前の1928年に銃撃により暗殺されている。
セキュリティ関連のコンサルタント会社エテレクトによれば、ソノラ州の元司法長官であるムリエータ氏は「83人目」だ。昨年9月以降にメキシコで殺害された政治関係者の数である。その後、さらに2人が殺害された。
相次ぐ流血事件は、ギャングによる暴力の激化をアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール大統領が封じ込めきれずにいることを示しており、選挙情勢においても、一時は圧倒的だった与党・左派「国家再生運動(MORENA)」の優位が揺らぎ始めている。
ロペスオブラドール大統領は今週、「候補者、指導者が脅迫を受け、時にはカヘメの候補者の件のように不幸にも殺害されている状況を常に注視している」として、ムリエータ氏にも言及した。
今回の選挙では、連邦下院議員、15州の知事、そして何百もの市で市議会議員が選出される。
MORENAと連立与党は、下院での過半数を確保するリードを辛うじて保っているが、ロペスオブラドール大統領が狙う、エネルギーの国家管理を可能にする憲法改正に必要な3分の2の議席を確保する見通しは日に日に薄れつつある。
エテレクトによれば、前回の中間選挙が行われた2015年に比べ、政治関係者の暗殺事件は3割以上も増えている(前回は9カ月間で61人が犠牲になった)。犠牲者には各政党の党員、立候補者、公職経験者が含まれる。
ロペスオブラドール大統領は犠牲者のために公正な裁きが行われることを約束し、過去の政権の汚職の悪影響が国内の暴力を激化させていると主張している。
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