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Sunday, May 23, 2021

日中韓は未来志向の協力関係を築けるか 「三国協力事務局」発足10年 - 毎日新聞 - 毎日新聞

インタビューに答える「日中韓三国協力事務局」の道上尚史事務局長=ソウルで2020年5月18日、坂口裕彦撮影 拡大
インタビューに答える「日中韓三国協力事務局」の道上尚史事務局長=ソウルで2020年5月18日、坂口裕彦撮影

 日中韓3国の首脳合意に基づき、3国の閣僚会議や交流事業を運営する国際機関「日中韓三国協力事務局」(TCS、本部・ソウル)が2011年9月に発足して、今年で10年を迎える。外交・安全保障や歴史認識を巡る問題で摩擦が生じることも多い3国は、どうすれば未来志向の協力関係を築くことができるのか。道上尚史事務局長に聞いた。【聞き手・ソウル坂口裕彦】

 ――発足から10年の実績と課題は何ですか。

 ◆中国の経済力が強くなり、米中対立が鮮明になってきた。それぞれの2国間関係には困難も生じている。一方で、3国の協力関係は、この10年間で順調に発展してきた。今では日中韓の閣僚級会合だけで21あり、活発に意見交換をしている。環境、高齢社会、感染症、防災、教育、特許など行政各分野の協力ニーズはとても高く、3国すべてに実利がある。学生やビジネスなどの民間交流も進めている。

 ――日本の実利とは。

 ◆環境や高齢社会、防災は、3国すべてにとって切実な課題だ。中韓は、先駆けて取り組んできた日本から多くを学んでおり、日本の影響力や価値を高める。逆に、中韓はデジタル化・情報化など日進月歩で行政部門を強化しており、日本が学ぶことも多い。

 ――官民それぞれの分野で、中国と韓国から学ぶべきことは何ですか。

 ◆韓国は、全国民の医療・保健データが一元的に管理されており、新型コロナウイルス対策でも効果を発揮した。無償レジ袋の廃止も、特許法制も、3国の中で最も進んでいる面がある。中韓はこの十数年、グローバル人材の育成にも熱心だ。民間の学生交流でも「中韓の方が国際舞台に慣れ、英語で堂々と自分の意見を言う」と、日本側が刺激を受けている。映画は、昔は日本が中韓の「先生」だったが、今は中韓の方が海外人脈を構築し、海外市場で売れる作品を作っている。日本の専門家は「中韓から学ぶべし」と力説している。

 ――日中韓は、外交・安全保障や歴史認識を巡る対立も抱えます。

 ◆懸案は各政府が、交渉を通じて解決すること。外交上の懸案で、日本はしっかりと主張・発信すべきだ。一方で、行政の各分野で日中韓協力が必要なことも、3国は理解している。(日韓関係が悪化していた)19年12月、中国・成都で日中韓首脳会談があったが、前後に、日中韓の六つの閣僚級会合が開かれた。

 外交・安全保障の対立と、協力で得る官民の実利は切り分けて考える方がよい。中韓のすべてから目を背けるのは非常に危ない。グローバル競争に勝とうと、中韓は行政や技術、ビジネス、教育を強化している。きちんとアンテナを張り、参考にするのがよい。

 ――日中韓のコロナ対策、特に日韓の差について。

 ◆日韓の世論の方向に差があると感じた。韓国は、PCR検査やワクチンを含め、徹底した速い措置を政府に強く求める。企業や民間の医療機関もすぐ動く。日本はやや慎重だ。

道上尚史(みちがみ・ひさし)氏

 1983年に外務省入省。在中国大使館公使や在韓国大使館総括公使、ドバイ総領事や釜山総領事を経て、19年9月から現職。著書に「外交官が見た『中国人の対日観』」(文春新書)や「日本エリートはズレている」(角川新書)など。

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