【カイロ=蜘手美鶴】オスマン帝国末期のアルメニア人殺害事件を米国が「ジェノサイド」と認定したことで、トルコは、人権重視のバイデン政権移行後にできた米国との距離がさらに広がり、両国関係は一層冷え込む可能性がある。対立していた中東諸国との関係改善に動きだしており、米国に代わる新たな同盟づくりを模索している。
◆トランプ氏退陣で蜜月一転
AFP通信によると、エルドアン大統領はバイデン米大統領の声明を受け、「歴史家が行う議論が第三者によって政治化された。わが国への干渉だ」と反発。外務省は米大使を呼んで抗議した。トルコはこれまでアルメニアとの双方で多くの死者が出たことは認めているが、意図的、組織的なジェノサイドを強く否定していた。
米トルコ関係は、バイデン氏の大統領就任以降に大きく変化した。蜜月だったトランプ前政権とは対照的に、バイデン氏はトルコの言論弾圧やロシア製地対空ミサイル「S400」の配備を問題視。エルドアン氏へ電話したのも就任後3カ月以上たった今月23日で、内容は今回のジェノサイド認定の事前通達だった。
◆強気外交から歩み寄りへ
エルドアン氏はこれまで、トランプ前大統領との関係を後ろ盾に、自国の利益を最優先に強気な外交を展開してきた。リビアやシリアに軍を派遣して周辺国と緊張が高まり、東地中海のガス田探査を巡ってはギリシャや欧州連合(EU)と激しく対立。中東地域でも孤立化を招いていた。
しかし、対米関係の変化を受け、トルコは3月以降、対立していた中東各国へ歩み寄りを見せている。エジプトには「外交関係改善の準備がある」と述べ、近く代表団を送る予定だ。
トルコ情勢に詳しいアハラム政治戦略研究センター(エジプト)のカラム・サエード氏は「今回の認定で米トルコ関係が悪化するのは必至。トルコは米国に代わる同盟の構築を模索しており、今後はロシアや中東寄りの外交政策を強めていくとみられる」と話す。
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