ここ数年、官僚を巡っていろいろな問題が生じている。加計・森友問題における幹部官僚の「忖度(そんたく)」。他方、現場の官僚が自死に追い込まれた。そして東京高検検事長の任期延長問題。今、総務省幹部官僚が高額接待を頻繁に受けていた問題が一挙に噴出してきた。
一方で、近年若手官僚の退職が増加傾向にあるという。問題が取り上げられると国会での議論となり、多くの場合、当該官僚は処分を受け、辞職していき、幕引きとなる。ほぼ一様に官僚の不始末と片付けられるが、本当に官僚に全てを帰する問題なのか。
その根源にある政治と官僚の関係や官僚の人事を巡る課題が置き去りにされているのではないか。政官関係はどの国においても統治の基本にある。日本でもこの機会に真剣な議論を行い是正すべきは是正しないといけない。取り返しのつかない過ちを犯してからでは遅い。
政治との関係はどの省にとってもデリケートな問題
私自身外務省を退官して16年になり、今日の官僚の意識を正確に語れるわけではないが、それでも36年間の官僚生活から想像できることは多い。
官僚生活を送ったものであれば誰しも思うことだが、政治との関わり方はいつの時代でも最も難しい問題だ。私が入省した動機は、国益を直接担う立場となり公共の利益に尽くしたい、ということだった。若いころは組織の駒の一つであり、指示を受けた仕事にできるだけ付加価値をつけてこなしていくことに全力を尽くした。
そして経験を積み仕事の裁量の幅が増えるにつれ、常に「国益は何か」を考えるようになる。課長職ぐらいになった時、初めて政治との関係を意識しだした。特に経済関係の仕事については官僚が考える客観的と思われる国益と政治家が重視する選挙民への利益とが相いれない場面に遭遇する。
もちろん、重要な政策ほど国民の理解が不可欠なわけで、国民に選ばれている政治家の理解と支持が不可欠となる。国内官庁の場合には農林族や通信族などいわゆる族議員と日ごろから密接に接触し、政治家の要求を聞きつつ、省の方針に理解を求めるプロセスも重要となる。
私が外務省経済局長であった時、大きな貿易赤字を持つ米国が強い要求をしてきたのは、携帯電話市場への参入を容易にするために必要な、NTTが持つ固定電話回線への接続料の値下げだった。
携帯電話の市場を活性化するには接続料を下げなければならないのは明らかであった。しかし民営化されたとはいえ、NTTならびにNTT 労組の力は強く、当時の郵政省は族議員の矢面に立つような交渉を嫌い、外務省だけで交渉を行うことにも反対しなかった。
米国との経済摩擦が厳しくなった時、多くの分野において市場開放を求められたが、国内官庁が族議員との関係をおもんばかって米国との交渉の矢面に立ちたくないというのは顕著な傾向だった。…
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