飲食店やお取り寄せ、レシピ、栄養の知識など、食に関わる情報は多い。採れたて野菜の鮮やかな色、有名シェフが作った見栄えする一皿、郷土料理から一般家庭の日々の食卓に至るまで、SNS上も食べ物の画像であふれている。人は食べなければ生きていけないから、食は誰もが関心を持つ世界共通の話題だ。もっとも、火を使って“料理”を始め、農作物を作って定住するようになった人類の歩みを振り返りつつ、食の現在、未来を俯瞰(ふかん)するのは大仕事。環境問題や貧困、農業の現場や食品業界の向こう側にあるさまざまな問題とつながっていることは分かっていても、どこから紐解いていいか分からないほど、日々の食卓はあらゆる世界に地理的、政治的、経済的、社会的、文化的、宗教的にもつながっている。この難物を四方八方から解きほぐしてくれたのがこの本『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか』(プレジデント社)だ。
著者のジャック・アタリ氏は、フランスの経済学者、思想家として、同国や欧州の政治に多大な影響力を持つ人物の1人。日本では政治や経済に関わる著作の翻訳や評論の紹介が多いが、音楽や食への造詣も深く、飢餓問題にも詳しい。
本書では、太古の昔からヒトが食とどう向き合い、それが家族関係や社会にどんな影響を及ぼしてきたか、食を軸にした世界史を概観することができるが、興味深いのはやはり近現代の食を取り巻くさまざまな変化と社会との関係だ。生産量の増加、大規模農家の優位と多様性の喪失、特定の企業によるある種の食の寡占、楽しみから実務になりつつある食事、食べる量や糖分を増やす孤独、そして肥満人口が栄養失調の人口を上回っている現状。
面白いけれど空恐ろしいのは、例えば「データを管理する企業と業務提携する保険会社は、冷蔵庫や(健康データが分かる)腕時計から得られる個人データに基づいて決定される食物を食べない被保険者に対し、保険金の支払いを拒否するかもしれない」というような“未来予測”だ。健康維持のために食事や運動のデータを機器に入力して自己管理する個人は増えているが、こうなると自己管理ではなく監視社会。われわれが紙一重なところに立っているのが実感できる。
どんな人が何を食べているのか、宗教やカニバリズム、性と食、食と会話、権力、地政学との関係まで、読み手の関心がどこにあっても、たくさんの入り口が用意された一冊。人口が増えていく世界で、誰もが満足に食べていくためには何をすればいいのか、まだ間に合う、という著者のアドバイスを読みながら、何をどう食べるか身近な食卓を再考するのも悪くない。
Text by coco.g
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June 17, 2020 at 09:43AM
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食と社会の関係を紐解き、未来を予測 『食の歴史 人類はこれまで何を食べてきたのか』【お薦めの一冊】 - オーヴォ
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