有効面積18cm2のOPVモジュールで、約130μWを出力
東洋紡は2020年3月、高い変換効率を実現し、薄暗い室内の光源下でも高い出力が得られる有機薄膜太陽電池(OPV)用の発電材料を開発したと発表した。この発電材料を用いてガラス基板のOPV小型セルやPETフィルム基板のOPVモジュールを試作した。
同社は、これまで培ってきた有機合成技術を応用し、変換効率の高いOPV用発電材料の開発に取り組んできた。開発中の発電材料は、ノンハロゲンの溶媒にも容易に溶かすことができ、塗布時のむらが極めて少ないため、安定した発電を行うことができるという。
2019年6月から半年間、同社はフランスの政府系研究機関である「CEA」と、発電材料の早期実用化に向けて共同研究を行ってきた。今回、溶媒の種類や塗布の手法を最適化した。
共同研究の成果を踏まえ、ガラス基板のOPV小型セルを試作した。このセルを薄暗い室内と同等の照度である220ルクスのネオン光源下で評価したところ、約25%の変換効率が得られることを確認した。この値は卓上用電卓に用いられているアモルファスシリコン太陽電池の1.6倍に相当するという。
左はOPV用発電材料、右はPETフィルム基板を用いたOPVモジュール 出典:東洋紡
ガラス基板に比べて発電材料の塗布が難しいといわれるPETフィルム基板のOPVモジュールも試作した。有効面積が18cm2の試作品を、照度220ルクスの環境下において評価したところ、約130μWの出力が得られたという。
同社は今後、早期実用化に向けて電池メーカーなどに新開発の発電材料を提案。温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源向けを中心に、2022年度中の事業化を目指す。
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