観光以上、移住未満で特定の地域と継続的に関わる人(関係人口)を地域活性化に生かす取り組みが県内外で広がっている。県は農村地域とつながりのある人を「農村関係人口」と位置付け、過疎が進む集落の担い手不足解消に生かす新事業に乗り出した。中山間地域などの活力をよみがえらせる救世主となるのか。行方を注目したい。
県は農村関係人口を「農村地域と関わりを持とうとする地域外の住民」と定義した。関わり方はさまざまで、何度も観光で訪れている人や住民と親しく連絡を取っている人、さらには農村に強い関心を寄せる人たちを指すという。新事業では、このような人々を農村に招き、農地などの保全管理、伝統行事をはじめとする地域コミュニティーの活性化に協力してもらい、集落の維持、発展を目指す。
今年度は三つの集落で実施する。県は各集落に地域振興の専門家を派遣し、それぞれの地域課題を把握するとともに農村関係人口の活用方法を探る。その上で、インターネットなどで人材を募り、住民と応募者によるオンライン交流会を経て、集落支援をスタートさせる。
人口減や高齢化が進む集落を維持するには、継続的な支援が必要になる。意欲のある個人とのつながりを保ちつつ、長期にわたり安定して人材を確保するため、企業や大学などと連携し、農村に関心を寄せる社員や学生が入れ替わりで訪れる仕組みを築くのも選択肢の一つとして考えてはどうか。
県は集落の住民や地域づくり団体の関係者を対象とした研修会も開く。人材の受け入れ体制を整え、活動を充実させるためだ。県内の先行事例として、いわき市入旅人地区の関係人口づくりの取り組みなどを学ぶ。
民間シンクタンク・ブランド総合研究所(東京)が今年二月に実施した都道府県別の関係人口調査で、本県の推計数は約千二百二十九万人で全国最多だった。本県にとって関係人口は貴重な財産といえる。ただ、人数が増えたからといって、それだけで地域が良くなるとは限らない。応援したいという気持ちに、購買や労働などの行動が加わってこそ、地域を豊かにしてくれるのではないか。
農村の担い手不足を外部の人たちに補ってもらうのは合理的な発想だ。しかし、それに頼りすぎてはいけない。手助けなしで自立する道を探り続けるべきだろう。その住民の意識の高まりこそが、集落を維持、発展させる原動力となる。(角田 守良)
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