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Sunday, December 27, 2020

FF7リメイク、異例の「500万本ヒット」の舞台裏 - auone.jp

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「ファイナルファンタジーⅦ REMAKE」は全世界で500万本以上販売されたヒット作となった(画像:スクウェア・エニックスHD)

20年以上前に大ヒットを記録したゲームソフトのリメイク作品が、2020年のゲーム業界を賑わせることになった。

スクウェア・エニックス・ホールディングス(スクエニHD)から2020年4月に発売されたソフト「ファイナルファンタジーⅦ REMAKE(FFⅦリメイク)」が、発売から4カ月足らずで全世界の累計販売本数500万本超(パッケージ・ダウンロード販売の合計)のヒットを記録した。

ファイナルファンタジーは30年以上の歴史がある人気シリーズ。中でも今回リメイクされた原作「ファイナルファンタジーⅦ(FFⅦ)」は、シリーズの金字塔ともいえる作品だ。壮大な物語や魅力的なキャラクター、初代のプレイステーション(PS)における最先端技術が駆使された映像が話題となり、PSの販売台数増にも貢献。1997年の発売から世界累計販売本数は1280万本以上に達する。

売れ行きの観測はネガティブだった

同シリーズは日本国内だけでなく、欧米を中心に海外のファンも多い。2016年11月に発売された「ファイナルファンタジーXV(15)」も累計800万本以上を売り上げるなど、新作の発売には注目が集まることが多い。

ただ、今回ヒットしたFFⅦリメイクは、原作をプレイしたユーザーは結末を知っているリメイク作品。さらに、1本で完結せずにストーリーの続編が今後も発売される「分作」の1作目にすぎず、描かれているのは序盤の山場までだ。その販売価格を8980円(税込)と新作並みの高額に設定する異例の展開もあって、売れ行きは疑問視されてきた。

こうしたネガティブな観測を一掃するかのように、4月10日の発売からわずか3日で世界販売本数は350万本(日本国内は100万本)を突破。この新作並みのヒットが牽引する形で、スクエニHDの2021年3月期の中間決算は主力のゲーム事業が大幅な増収増益を達成し、同社の全体業績は売上高1727億円(前年同期比43%増)、営業利益316億円(同98%増)となった。

そんなFFⅦリメイクがヒットに至るまでは、決して順風満帆というわけではなかった。

原作のディレクターにして、FFⅦリメイクではプロデューサーを務めた北瀬佳範氏は「10年ほど前から“FFⅦのリメイクはいつ?”といろいろな方々から会うたびに言われていた。それだけファンが多いため、開発するにも相当の覚悟が必要だった」と振り返る。

こうした声に応えるように、2015年6月にアメリカのゲーム展示会「E3 2015」で初めて作品が一般向けに発表された。ただ、外部の協力会社を複数介していたことで、相互の開発過程におけるコミュニケーションが煩雑になり、業務の流れが滞ってしまう。

発表から市場投入まで5年近くを要した

対策として、2017年には外部の開発会社と協力してゲーム開発する体制から、社内中心の開発体制に方針を転換。その後、浜口直樹氏が共同ディレクターに就任し、全体の統括業務を担当するようになったことで開発スピードが早まり、発売までの道筋が見えてきた。

北瀬佳範(きたせ・よしのり)。FINAL FANTASY Ⅶ REMAKEプロデューサー。スクウェア・エニックス取締役兼執行役員兼開発担当 第一開発事業本部 事業本部長(撮影:梅谷秀司)

開発人員を増やしつつ、量産化への準備を進めるなど、発表から市場投入までは5年近くを要することとなった。「当時のストーリーのボリュームのすべてを1度に実現しようとしたら、開発が膨大になってしまう。今できる範囲でしっかりと届けつつ、高いクオリティで遊べるということが何よりも重要だった。そこで、今回1作目のストーリーがここ(序盤の山場)までになった」(北瀬氏)。

分作となっても、FFⅦリメイクは最新のグラフィックでビジュアルを一から作成し、オリジナルの要素を加えたことで、近年のファイナルファンタジーシリーズの新作タイトルに近い規模の開発案件となったという。このようなソフトは「AAA(トリプルエー)タイトル」と呼ばれ、長い開発期間や大規模な開発人員を要するため、開発費もかかる。本作の開発費は非公開だが、一般的に、数百人規模で開発し、100億円以上の開発費がかかることもある。

巨大プロジェクトであり、原作には多くのファンがいることからも失敗が許されなかった今回のリメイク作品。ヒットを飛ばせた要因の1つは、メインターゲットに据えた「原作のFFⅦを遊んだことのあるユーザー」の取り込みだ。

当時は家庭用ゲーム機で遊んでいたものの、20年以上経ったことで生活環境が変わりゲームから離れてしまったユーザーにも、当時のPSから進化したPS4で遊んでほしいという狙いから、原作の懐かしさとリメイクとしての新しさの融合を重視。「原作で体験した部分は変えずに、当時の原作で表現しきれなかった部分を最新の技術で描写することで驚きを与えたかった」(浜口氏)。

浜口直樹(はまぐち・なおき)。 FINAL FANTASY Ⅶ REMAKE Coディレクター(撮影:梅谷秀司)

例えばPS版では1つの視点からのみの描写だったが、PS4版では、上下左右さまざまな視点からキャラクターを操ることができる。そこで、20年以上前には表現できなかった街の構造の細部やキャラクターの表情をよりリアルにし、ゲームへの没入感を高めることができた。

「新しい世界観を届ける新作と異なり、リメイクはスタートとゴールが決まっている。どう再創作し届けるか、今の技術ならどこまで世界観を表現できるかを突き詰めた。ヒットしたことは私たちの自信につながった」と浜口共同ディレクターは話す。

コンセプトはトレンドに寄せすぎない

また、新しいバトルアクションといった要素を原作より増して、30~40代以上の原作ファンに新鮮味を与えつつ、1つ1つの動きの操作はしやすくした。ストーリーに行き詰まったときには、すぐにヒントが出てくるなど、久しぶりに遊ぶユーザーでも楽しめる工夫も施した。

一方、ゲームのコンセプトはトレンドに寄せすぎず、過去の体裁を貫いた。近年の家庭用ゲームは、プレーヤーが自由に動けるオープンワールドのバトルアクションゲームが人気だ。ただ、原作のFFⅦで評価が高かったのは、1本の映画のようにゲームを楽しめるストーリー性。リメイクの制作にあたり、ストーリー性を重視する概念は変えなかった。

ヒットを呼び込んだ要因はもう1つある。原作を遊んでいなかった若年層のユーザー獲得だ。その背景では、新しいバトルアクション要素の評価だけでなく、原作ファンによるSNSでの魅力発信が世代を超えて影響している。

こうして異例ともいえる開発・販売展開により、大型タイトルのリメイク作品を成功させたことで、昔ながらのファンの回帰を促すだけでなく、シリーズのファンの新規開拓にもつながった。

加えて、今作ではストーリーが途中までのため、結末を早く知りたいユーザーが原作を移植したスマホアプリ版(2015年以降配信)などを購入するといった波及効果もあった。

次の課題は続編の早期投入

ヒットを記録したFFⅦリメイクだが、今後の課題となるのは分作の2作目以降の発売だ。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に外出が制限され、巣ごもり消費の代表格である家庭用ゲームに注目が集まった。

北瀬氏は1990年にスクウェアに中途入社後、FFシリーズに5作目から携わる。浜口氏は2003年にHAL卒業後にスクウェア・エニックス入社。FFⅦリメイクには立ち上げから参加してきた(撮影:梅谷秀司)

また、11月にソニー・インタラクティブエンタテインメントから新型ゲーム機のPS5が発売されたことで、新規のユーザー増などすそ野は広がりつつある。こうした追い風が吹く中で、できるだけ早くユーザーに2作目以降を届けることが重要となる。

すでに続編にあたる2作目の計画は始まっており、現在も開発を進めている(発売時期などは未定)。FFⅦリメイクのヒットをきっかけに、続編の開発に携わりたいというゲームのエンジニアが、世界中から数多く中途入社の応募をしてくるなど好循環も生まれている。

スクエニHDは2021年以降、PS5向けにシリーズの最新作である『ファイナルファンタジーXVI(16)』の発売も予定している。新作投入と今回のようなリメイクのヒットのサイクルを回していけるかが、シリーズの今後を占う試金石となりそうだ。

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