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Wednesday, November 25, 2020

公認会計士キャリア辞典:専門性の高い領域である事業承継やM&Aを得意とする/貝井 英則氏 - KaikeiZine

今回は果敢な探求を続けて専門性の高い領域を得意とする公認会計士、貝井 英則氏にお金のカラクリ侍こと松本ゆうやがインタビューしました。

―略歴を教えてください

1978年の奈良県出身です。京都大学総合人間学部を卒業して2006年に公認会計士試験に合格し、大手監査法人(現、PwCあらた有限責任監査法人)に就職しました。その後、2011年に大手家電メーカーへ転職して海外子会社の管理業務を担当していました。そして、2013年にベンチャー企業の経営管理を経て、2016年に独立して貝井経営会計事務所を開設し、事業承継やM&Aの専門家として活動しています。

 

公認会計士を目指した理由は何ですか?

もともとは公認会計士とは異なる道を志していました。京都大学総合人間学部では心理学を専攻していて、ゆくゆく臨床心理士やHR(Human Resources)領域の専門コンサルタントになるつもりでいました。当時、そのためには人事労務を経験しつつ会社の仕組みを知ることも必要だと思っていたので30歳までは普通の会社で働くつもりでした。このため大学時代に社会保険労務士の資格を取っていました。

実際に就職活動をして、HR領域とは異なりますが、より人材領域でシビアなところとして、大手の人材紹介会社の営業マンの内定を頂いていました。

しかし、そこで公認会計士への道を考えるようになりました。少し脱線しますが、大学時代に学んでいた総合人間学部では、現代の課題解決は1つの専門性だけで解決するのではなく、複数の専門力を活用した統合的な対応が本質的な解決に繋がるという基本的な考え方を学んでいました。実際に自分も社会に価値提供をするうえで網羅的で本質的な対応ができるビジネスマンになることを志向していました。

このためHR領域だけでなく、もっと総合的にレベルの高い専門的な力を身に着けたいと就職活動を通してより感じるようになりました。その手段として公認会計士と弁護士を検討しました。

弁護士は調べていくと紛争の解決が仕事となるため、ネガティブな仕事やあまり関わりたいと思えない方のサポートも多くなりそうだと思い、目指さないことにしました。

一方、公認会計士に関して情報収集する中で、公認会計士として活躍している高校の友人から話を聞いたり、父がよくやっていた株取引を通して証券市場の番人となれる存在の社会的なニーズを感じたりしたため、その道を志すことにしました。

公認会計士を目指すため、内定を辞退させて頂き資格浪人をすることにしました。実家の奈良県に引きこもってTACや通信講座で勉強するなどして3回かけて公認会計士試験に合格しました。

監査法人にいらっしゃったときの業務内容はどのようなものでしたか?

PwCあらた有限責任監査法人の一期目に入社しました。外資のリファールを多く担当していましたね。大阪で就職し、東京で4か月間の研修を受けました。研修とは言いながら講義型の研修は12月のみで、1~3月はさっそくリファールでOJTを行いました。猫の手も借りたい状況だったようです。その4か月間で東京も悪くないと思い、そのまま東京へ転籍。その後は一般的な監査業務やIFRSのプロジェクトも担当していました。

―監査法人から転職しようと思った理由やきっかけはありましたか?

理由は2つあります。

1つは、会計監査をやっているとどの公認会計士も思うところだと思いますが、監査は結局のところ過去の数値をいかに確認するかだけですので、利益を増やしたりするようなビジネスの意思決定に関わる将来の数値に関する会計に関わりたくなったためです。よりビジネスの本質に向き合いたくなったのです。

2つ目は、監査法人のなかで会計を究めようとしても似た者同士での戦いになってしまうので、生き残っていくためにはレアな存在になる方がいいと思ったことです。自分は公認会計士と掛け算もできる社会保険労務士もあったため、監査法人の外で戦うことを決めました。

どのような転職先を希望していましたか?

外でチャレンジするにしても、一般企業の経理だけだと歯車でしかなくなってしまうのでCFO的な管理者の裁量が求められ、マネジメントなども経験できそうなところを志望しました。そこで、海外子会社のCFOを目指すことにしました。結果として大手家電メーカーの本社の海外事業本部で勤めることになりました。

こちらの事業部では事業計画の策定、連結パッケージ、移転価格の税務、海外法務や管理会計システム導入など幅広く海外子会社の管理を対応しました。ゆくゆくは海外に赴任する予定でしたが、会社が潰れかけてベンチャーに転職しました。

海外で働きたい思いも残っていたので、海外にいけそうな企業を探しており、当初はベンチャーへの転職は考えていませんでした。しかし、ちょうど大学の学部の先輩が立てたベンチャーがあり、IPOの準備をしていたためジョインすることにしました。IPO対応を通じて何でも屋で力をつけるのもいいかなとも思いました。

大学で学んだ総合人間学部の1つのことを掘り下げていくだけだと今の時代は出来て当たり前、1つの専門にこだわりすぎてはいけない、知識とか資格は手段でしかない、今の時代は1つのことを極めても問題は解決できない、これからの課題解決のアプローチとしては環境的な側面、経済的な側面、心理的な側面などあらゆるファクターがすべて大切だという考えがあったからです。

監査法人、事業会社、独立の違いを教えて頂けますか。

  • ・監査法人

最先端の知識が手に入る場所です。凄い人がいっぱいいます。私は早めに退職しましたが今考えるともっと残っていれば得られるものがたくさんあったなと思います。誤解を恐れずに言えば、外にでた人は大手で身につけたことをスペックダウンして自分で提供しているに過ぎないともいえます。仕事がいやでもくるという恵まれた環境でもあります。

  • ・一般事業会社

管理部門とは言っても、よりビジネスに近いというところです。ビジネスをダイレクトに感じられます。大手だと人脈が自分でないと歯車にしかならないです。ベンチャーだと経営者と合うかどうかが重要になります。ここも仕事がいやでもくるという恵まれた環境です。

自分のやりたいことができるという充実があります。時間の融通が利きます。新しいテーマを自分で拾い続けないといけない大変さもある。仕事が降ってくることはないし、取りに行かないといけません。過去のスキルを切り売りしていくだけだと生き残れません。顔を張らないといけないしんどさと、面白みの両面があります。人間関係が勤めているときは変わります。

また、士業や経営者として独立すると、自分という商品を売ってる営業マンだという意識が必要ですし、そのような意識が芽生えてきます。世の中の営業マンはノルマがあるからと売っている人が多いですが、我々が売っているのは自分自身なので逃げも隠れもできないけれど面白みがあります。

若手公認会計士に向けて独立のコツも踏まえてキャリアのアドバイスをお願いします。

監査をやっているときは反復作業に物足りないと感じることもあるかもしれないですが、冷静に考えると公認会計士の基本を身に着けられる大切な実務なので疎かにはせずにしっかりと体得してください。

そのうえで、最終的にはなんとか生きていけるから、とりあえず何かやってみてほしいです。公認会計士という資格は有難いことにセーフティネットになります。

もちろん外に出ると大変ですし、1つのコトを極めて蓄積していった方が楽ですし。条件も上げやすいです。それでも何かをやってみるというチャレンジ精神を持って動く価値はあります。

もし独立したいのであれば見せ方にコツがあります。お客様は専門家の能力はわからないのです。歯医者だとしたら歯医者の能力の良し悪しが我々一般人にはわからないですよね。私たち公認会計士の仕事も他との違いを明確にしてあげないとお客様はわからないのです。

そして選んでもらうには差を見せることが大切です。しっかり自分のできることを伝えることが大切です。頭一つ出るだけでお客様からの信頼などの反応が全然違います。口コミで集めるのはそれなりに活動した後です。スタートこそしっかりと見せ方を意識することが大切です。

私は独立当初、管理業務を1ストップで全部なんでも出来ますと謳っていました。しかし集客できませんでした。最初は見せ方をミスっていたんですね。事業承継やM&Aなど尖ったものを作り始めて改善されていきました。お客様の最初の入り口を掴めるとその後は他の相談も来るようになるのです。広い所からではなく尖ったところからやる必要があったことに気付きました。順番が逆だったのです。

テーマの設定は世の中が求めていることを尖らせるといいのです。私は事業承継やM&Aを選びました。「管理業務全部をなんとかします!」だけだと中小企業は少なくとも刺さらないですし、大企業ならアウトソーシングでちょっとニーズあるかなってくらいでしょう。

さらに、独立したらもう1つ気を付けて欲しいことがあります。最新知識のキャッチアップです。これには独立した人のネットワークが大切になります。繋がりがないとなかなか自分だけで新しい知識が必要なことに気付くこともできません。手が足りない方のお手伝いをしながら身に着けるのでもいいでしょう。そうやって大手で身に着けた知識の切り売りをするだけでなく、高めていく意識がとても重要です。

インプットしたらアウトプットまで意識しましょう。セミナーはとくにおすすめです。専門家としてちゃんとしていると表現しやすいといえるでしょう。

私は最近、税理士業務も始めました。資金調達周りの相談が増えたためです。クライアントに返済するための経営の見える化、予実管理をしてキャッシュフロー管理させてあげないといけません。しかし、そこだけ受託するのは難しく、税務と一緒に受けるニーズが高いことが分かったのです。仕事はこのように、ニーズの連鎖で広がっていくことが大事だとよく感じます。

実際、税務の採算性という意味でのコスパは公認会計士業務と比べたら高くないですが、お客さんとの繋がりがスポット業務ではなく、長期かつ定期的にできるメリットがあります。そうやってお付き合いしているうちにコンサル案件などに繋がっています。フロント業務だと割り切ってでも税務はやる意義があるなと感じています。

このように、私は今後も変化し続けたいと思っています。最初は税務なんかやらないと思っていたとしてもやってみたり、こだわりを見直せる自分でありたいです。周りに良くも悪くも流されて(ニーズをキャッチアップして)生きていきたいと思います。みなさんもなんでも決めつけずに変化を楽しみながらチャレンジしてみてください。

インタビューへのご協力、ありがとうございました。

(インタビュワー:松本ゆうや)

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公認会計士

立命館大学卒。34歳。大手監査法人を修了考査合格直後に転職、会計系コンサルティングファームへ。財務調査、IPO、事業再生、不正調査対応といった会計業務を経験しつつ、新規事業開発やマーケティング支援まで幅広く経験し独立。独立してからコンサルティング業務を中心にしつつ、自ら飲食店や広告代理店も経営し、ベンチャー役員参画、多様なコンテンツ開発を自社で行うなど多角的に活動。フリーランスの公認会計士の立場からお金のカラクリ侍としてYouTubeも開設している。
◆youtube:お金のカラクリ侍
https://www.youtube.com/channel/UCtzX17fZ0z-iwG4GXsfS84g/videos?view_as=subscriber

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