
アルカイダの「最重要指名手配リスト」入り
ソマリア出身のアヤーン・ヒルシ・アリ(52)は、絶えず身の危険にさらされ続けている。 オランダ下院議員だった2004年、ムスリムの女性の多くが服従を余儀なくされている現実を書いた彼女の著書にもとづいてドキュメンタリー短編映画『服従(Submission)』が製作されたが、その結果、監督のテオ・ファン・ゴッホが殺害されるという事件が起きている。 ファン・ゴッホは、イスラム原理主義過激派の青年、モハンマド・ボウイェリに路上で銃撃を受けたのちに刺殺された。ボウイェリは「次はヒルシ・アリだ」と書いたメモを遺体に残していた。 ヨーロッパの治安悪化に加え、オランダ亡命の際に虚偽の内容で難民申請をして受理されたとの告発を認めたために物議を醸したヒルシ・アリは、2006年にアメリカに向かい、新保守主義系シンクタンクのアメリカンエンタープライズ公共政策研究所(AEI)の研究員となる。現在、彼女はカリフォルニアで、24時間体制で身辺警護を受けながら暮らしている。夫はイギリスの著名な歴史家、ニーアル・ファーガソンだ。 ヒルシ・アリは著作で、イスラム原理主義が女性と西洋、ひいては世界に脅威をもたらしかねない存在だと繰り返し主張してきた。その信念はいまも揺るがず、原理主義の脅威を説く本を次々と世に送り続けている。エッセイ集『囚われた処女』(未邦訳)はベストセラー入りし、2007年に自伝『もう、服従しない』(英語版)が出版された。 当時、9.11以降の世界を理解できずにいた若い私はこの本を読んで強い感銘を受けた。本にはムスリム同胞団からの離脱、ソマリア、サウジアラビア、エチオピアでの生活、両親が決めた結婚から逃れてオランダへ逃れた尋常ならざる半生が書かれている。彼女はオランダでヨーロッパの、とりわけ啓蒙主義的な思想に触れて、イスラムの教えから去ったという。 その後、『もう、服従しない』の続編『ノマド:文明の衝突をくぐりぬけた個人の遍歴』(未邦訳)を、次いで『異端:イスラムがいますぐ改革を必要とする理由』を上梓している。 最新刊は『餌食』(未邦訳)という労作。彼女は本書で、2015年の難民危機以降、若い男性が大量にヨーロッパに流入したのは、ヨーロッパの女性にとって害悪になっただけと書いている。 簡潔な文章で書かれた魅力的なこの一冊は、デンマークで売り上げトップに躍り出るなど、ヨーロッパ各国でベストセラーになった。だがアメリカではほとんど黙殺されている。これに関してヒルシ・アリは、冗談めかしてこう表現した。 「出版インフラを牛耳っているのはウォークな(人種差別などに対する意識が高い人を揶揄したスラング)人たちだから」 予想どおり、書評家らは嫌悪をあらわにした。作家のジル・フィリポビッチが「ニューヨーク・タイムズ」に寄せた書評では、この本を「絶対主義的」と呼び、暗に人種差別的だと批判している。イギリスでは、マルヤム・ナマージーから「トランプ寄りだ」と非難された。 じつに奇妙な反応だ。この本は驚くほど中立な視点で、注意深く問題点をあぶり出している。それに対する建設的解決策もたくさん詰まった一冊だ。 このように、彼女の批判者はイスラム社会の人間にとどまらない。「褐色人種」は西洋白人社会が永遠に必要とする犠牲者だ。その見方に対するいかなる批判も許さない左派の大部分も、ヒルシ・アリ批判に加わっている。 沈黙を是としないヒルシ・アリは、アルカイダの最重要指名手配リストに入るという恐るべき名誉の持ち主でもある。それはどのようなものなのか彼女の口から訊きたかったが、ヒルシ・アリのコミュニケーション責任者から、その質問は控えてほしい、彼女の安全に関わることはコメントできないとさえぎられた。
からの記事と詳細 ( 「西洋の人権意識高い系にはうんざり」ソマリア出身の女性知識人が英紙に断言(クーリエ・ジャポン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
https://ift.tt/3nnfIqP
No comments:
Post a Comment