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Tuesday, July 27, 2021

「力のない代」日本文理 無駄な上下関係なくし変わった - 朝日新聞デジタル

(27日、高校野球新潟大会決勝 日本文理7-3新潟産大付)

 一回表無死満塁、日本文理の4番、渡辺暁仁(あきと)主将(3年)が打席に入った。準決勝までの打率は2割6分3厘。好調な打線の中で不振が続いていた。

 3球目、140キロの外角低めの直球に体が自然と反応した。体勢を崩されながらも振り切ると、打球は左翼方向に高く上がった。「泳がされた感じでレフトフライかと」。打球はそのままスタンドに吸い込まれた。球場が歓声に包まれる中、思わず走りながらガッツポーズをした。

 部員数は100人を超え、常に勝ちを求められる強豪校。昨夏、前主将から「プレッシャーはすごい」と言われ、主将を引き継いだ。全力でチームを引っ張ろうと思った。しかし、今の3年生は、目立った選手がいない「力のない代」と言われてきた。チームとしての総合力を高めるため、無駄な上下関係をなくした。「思ったことを素直に言ってくれ」とミーティングで下級生に呼びかけた。

 それまで先輩に廊下で会うたびに立ち止まり、頭を下げるのが当たり前だったが、それも徐々に減った。一方、失策をした3年生に下級生が「しっかりしろ」と声をあげることも珍しくなくなった。エース田中晴也(2年)は「3年生でもダメなプレーは見逃さないし、助言もする」。捕手竹野聖智(同)も「3年生に意見を聞いてもらえ、自信にもつながる」と話す。

 すぐには結果につながらなかった。昨秋の県大会では、準々決勝で加茂暁星に完封負け。春は4回戦で関根学園に九回裏二死から5失点、逆転サヨナラ負けを喫した。「このままじゃまた同じ結果になる。練習の量も質も足りない」と鼓舞した。

 終盤の粘り強さをつけるため打撃練習の最後の一振りはヒット性の当たりを出すよう全員で取り組んだ。自身も一心にバットを振り続けた。打球で割った校舎の窓ガラスは入学以来10枚近くになった。

 「夏に見返す」という思いでノーシードで臨んだ今大会。決勝の大舞台で試合の流れを呼び込んだ。

 九回、新潟産大付の最後の打球は左翼を守る渡辺のグラブに収まった。「ほっとした」。マウンドでは学年関係なく集まった仲間が、満面の笑みで待っていた。顔をほころばせ、マウンドに駆け寄りながら、思った。「次は甲子園で勝つ」。すぐに次の舞台を見据えていた。(小川聡仁)

     ◇

 162センチ、64キロの小柄な選手が躍動した。日本文理の先頭打者、土野(はの)奏(かなで)(3年)は今大会の全6試合で複数安打となる12安打、打率4割8分を記録した。

 一回表の先頭打席、外角直球をたたいた打球は一塁への内野安打。相手投手の出ばなをくじき、その後の満塁本塁打につながった。「後ろに頼もしいバッターが控えているから、出塁することだけを考えた」

 2017年の新潟大会で打率5割2分2厘を記録し、甲子園に出場した日本文理の1番打者、飯田涼太さん(当時3年)に憧れ入学した。当時中学2年で、東京都内の自宅で甲子園のテレビ中継を見ていた。飯田さんも160センチ、65キロと小柄。チームを牽引(けんいん)する姿にひかれ「飯田さんを超えるトップバッターになりたい」と思った。

 試合後、甲子園出場を知った飯田さんから「おめでとう」とスマホにメッセージが届いた。だが、「あの人の勝負強さにはまだ及ばない。自分を追い込んで、絶対に超える」。甲子園での活躍を誓った。(宮坂知樹)

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