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Wednesday, June 16, 2021

宇宙で6年間保存されていた精子から健康なマウスが誕生 - GIZMODO JAPAN

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宇宙育ちの精子から赤ちゃん誕生!

国際宇宙ステーションで行われた生物学的実験の最長記録が、今回のこのフリーズドライしたマウスの精子の実験でした。Science Advances誌に掲載された山梨大学の若山照彦教授らの研究論文によると、フリーズドライされたマウスの精子から国際宇宙ステーションで6年の時を経て健康なマウスの赤ちゃんが生まれたとのこと。宇宙放射線はDNAに影響を与えると考えられてきましたが、宇宙放射線に接触する極限環境の宇宙で過ごしても生殖可能という結果となったわけです。

今から何百年も先に人間が他の惑星で生活するようになったとき、犬や猫のような動物も一緒に行くことになります。その動物たちの種の存続のためには、近親交配を避けるためたくさんの動物を持っていかなくてはいけません。でも、それは費用がかかりすぎます。フリーズドライにした精子と、可能であれば卵母細胞も持っていっておけば、輸送費をかけることなくその種の繁栄を保つことができると若山教授は説明しています。これは論理的には人間にも応用できることですよね。

国際宇宙ステーションで冷凍庫や液体窒素のタンクを準備しなくてもいいように、若山教授のチームはフリーズドライを採用。フリーズドライはインスタントコーヒーやドライフルーツを作る要領と同じ。これにより室温で保存が簡単にでき、宇宙飛行士による作業の必要がないというなんとも素晴らしい結果に。水を加えるとすぐ使えるようになります。フリーズドライの工程で精子は死んだ状態になりますが、水分を加えて卵子に注射すると無事に産仔を得ることが可能なんだそうです。

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マウスの精子はガラス製のアンプルに入れて凍結乾燥させ、ISSで5年10カ月間保存されました。
Image: 若山照彦教授(山梨大学)

今回の実験では、12匹のマウスのフリーズドライ精子を使いました。そのうち半分は国際宇宙ステーションに持っていって、ゆっくりと宇宙放射線に接触させること6年。そして残りの半分はJAXA筑波宇宙センターで国際宇宙ステーションと同じ環境で保管しました。

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培養した胚が正常に発育するかどうか? 宇宙育ちの精子から得られた良質な8セルステージの胚。
Image: 若山照彦教授(山梨大学)

2014年、ちょうど9カ月経ったころ、実験がちゃんとできているかの確認のためフリーズドライ精子のサンプルのいくつかが地球に戻されて確認されました。そして2年9カ月後にまたサンプルのいくつかを地球へ戻して確認。最後は5年10カ月宇宙にいたサンプルを地球に戻したと言うわけです。それぞれのサンプルに対して放射線量の測定とDNAがダメージを受けていないかのテストが行われ、卵子に注射されました。水分で戻されたフリーズドライ精子を使った受精卵は、地球に保管されていた精子を使った受精卵に比べてほんの少し質が劣っていたようですが、大した影響があるわけではなく、宇宙で6年間保管した精子からは168匹の子が生まれました。全員異常なし! 生まれたマウスたちは順調に成長して交配し、自分たちの子供も作ったそうです。

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宇宙の精子から生まれたマウスたち。
Image: 若山照彦教授(山梨大学)

研究チームはさらに、地球の精子と宇宙の精子をX線にかけたところ、宇宙の精子の放射線耐性がとても強かったとのこと。この実験からフリーズドライした精子は、宇宙で200年間保存が可能と結論付けられました。「宇宙ではふたつの異なった環境が存在します。ひとつは宇宙放射線、もうひとつは無重力です。無重力空間で哺乳類胚が育つかどうか実験してみたい」と若山教授は語っていて、この実験計画はすでにNASAとJAXAによって認可されているそうです。

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