「2021年 SEOの挑戦課題」と題し、SEO中級者向けに、前編では「ユーザーの検索目的に寄り添うコンテンツ作り」について紹介した。後編では、「ユーザーとの関係性作り」に焦点を当てる。
なお前編同様、後編も、750以上のサイト運営を支援してきたFaber Company(以下、Faber)のCEO 古澤暢央とSEOエキスパート 小丸広海が解説する。
他チャンネルでユーザーとの関係性を作る
私たちの現実社会における情報収集や購買を振り返ると、知らない人が発信した情報/商品よりも、一定の知名度や実績をもった人/企業を選ぶことが多い。現在の検索エンジンも、まるで現実社会が投影されたような検索結果となっている。
検索エンジンはさまざまなデータやシグナルを獲得・学習し、アルゴリズムを作っているのだが、次の点が重要なシグナルではないかと私たちは考えている。
- ブランド名検索数(サイト名/サービス名の指名検索を指す)
- オンライン上での評判言及や支持リンク
- ユーザーの行動(検索結果ページ上や当該サイト上での行動) など
特にGoogleはこういったことを公式には明言していないが、参考までにデータを示したい。
次の図は、2020年12月のコア・アルゴリズムアップデートの影響が大きかった美容/金融/法律/医療系から約20キーワードをランダムに選んでGoogleで検索し、上位(1~10位)と中位(11~20位)の各指標を比較したデータで、概ね上位(1~10位)の方が勝っている。もちろん各指標と検索順位との因果関係を示すものではないが、1つの傾向として見てほしい。
なお、図の中の各項目の調査方法と意図は次のとおり。
- ブランド名検索数:Google広告キーワードプランナーツールによる当該ブランド名の月間平均検索ボリューム。
- サジェストキーワード数:オートコンプリート機能が、当該ブランド名に紐づいてサジェストしたクエリ候補の数(オートコンプリートはグーグル検索での機能。検索キーワードの候補を自動的に提案してくれる。詳細はヘルプ記事を参照)。オートコンプリートがサジェストしたクエリは、他のユーザーがすでに検索した語句に関連して予測される可能性があるので、ブランド名検索の幅や広がりの参考として調査した(業界を代表する大規模ブランドは除外したが、除外しない数も大差はなかった)。
- 被リンク数:サードパーティツールahrefsで計測した被リンク数。ただし、質は見ていない。
- Google メンション数:Googleにて「”ブランド名” 対象クエリ -site:自サイトドメイン」の検索構文での検索ヒット数。言及の多さの参考とした。ただし、ネガティブorポジティブかの判定はしていない(ここでは目視でクラッキングサイト等を除外したが、除外しない数も大差はなかった)。
- Twitter メンション数:言及の多さの参考として、Yahooリアルタイム検索での当該ブランド名で2020年12月の1か月間におけるTwitterでのメンション数をカウント。ただし、ネガティブorポジティブかの判定はしていない。
さて、上の図のように、各指標とも上位(1~10位)の方が勝っている。とはいえ検索結果ページ上でのクリック率やページ滞在時間をハックしたり、検索数の多い他ブランド名を拝借するなどして検索順位を上げようとしても、実際には上手くいかない。
2016年頃までは、クラウドソーシングを活用し不特定多数への業務依頼を行ってユーザー行動ハックを実践するプレイヤーは存在したが、今は全く通用しないだろう。では、どうすれば良いのか?
先ほどあげたシグナルは、ユーザーとの関係性作りが進んだ(≒ファンになってくれた)結果として得られるものだと筆者は考えている。なお、ここでいうユーザーとは購買客だけでなく、サイトにアクセスしてくれる非購買顧客やコンテンツなどの定期的な読者(=オーディエンス)も含む。
ちなみに卑近な例で恐縮だが、弊社のプロダクトブランドである「MIERUCA(ミエルカ)」では、2017年頃からオフラインでの活動やSNS活用を地道に続けており、ブランド名検索数が年平均15%増、オンライン上での評判言及や支持リンクも着実に増えている。
さまざまなWeb媒体への露出やEXPO出展などの効果も大きいが、オフライン活動やSNS活用とも無関係ではないだろう。
では、どのようにユーザーとの関係性作りを実践するのかを見ていこう。
オフラインの活動をオンライン上に展開する
ミエルカではお客様同士の交流の場として「ミエルカユーザー会」というオフラインイベントを定期開催している。
そしてイベント中やイベント後に、参加者の皆さんが得た学びや意見を「#ミエルカユーザー会」「#ミエルカweek」などのハッシュタグを用いて、Twitterなどで積極的に投稿いただくよう働きかけている。
なおハッシュタグとは、#(ハッシュマーク)の後ろに特定のトピック記述することで投稿をタグ化し、趣味・関心の似たユーザー同士で話題を共有したりする仕掛けのことである。
説明するまでもないが、あるイベント参加者が自身のTwitterに投稿すると、そのフォロワーのタイムラインにミエルカユーザー会に関する投稿内容が表示される。それによって新たな認知獲得のキッカケとなる。また、その投稿に興味をもち、ハッシュタグをクリックして議論に参加したりリツイートするユーザーもいる。
実際にWeb上で確認すると、当社faber発信のSNSやプレスリリースはもちろんのこと、自然発生したまとめ(はてなブックマーク、togetter)や各SNSでのユーザー言及、ブログでの参加レポートなどが見受けられた。
企業は日々、イベント・セミナー・交流会・店舗での接客など、オフラインで何かしらの活動を行っているが、「それをオンライン上に誘導/展開できないか?」と考えてみると、評判言及や支持リンクを獲得するチャンスが広がってくる。
では、もう一歩踏み込んだSNS活用について考察しよう。
SNS×SEOの接点の作り方
昨今、YouTubeチャンネルを開設したりTwitterアカウントを運用し、多くのフォロワーをもつ企業が増えた。しかしSNS内の閉じた環境だけでフォロワーが盛り上がっても、当該サイトと紐付かなければ検索エンジンは良いシグナルとして認識できない。
各SNSのコンテンツ閲覧者に対して「もっと見たい」「他者に教えてあげたい」という動機付けや、「また困った時や入用の時にはここに訪れよう」と思えるような体験を提供できれば、SNS内から、検索エンジンや当該サイトに行動(共有/言及/再訪問/検索)を移すキッカケを生み出せる。
たとえばこんな経験はないだろうか?
暇つぶしにTikTokを見ていたら気になるコンテンツが出てきて「続きはYouTubeで」と書かれていたのでYouTubeに移動した。案の定、面白かったのでチャンネル登録をし、後日何度か動画に接しているうちに運営者のことが気になったので、検索をしてWebサイトにアクセスし、じっくり見た。ついでに自身のTwitterでそのYouTube動画をシェアした。
この流れは、次の図のように続くかもしれない。Twitterのタイムラインで流れてきたその動画をフォロワーが見てリツイートし、それを見たこれまた別のユーザーが「これは参考になる」と感想を添えて自身のブログにそのYouTube動画を貼り付けて紹介し、運営者のWebサイトへのリンクも掲載する。
このようにSNSと当該サイトへの導線がうまくつながれば、検索エンジンがそのシグナルを認識し、間接的にSEOに貢献すると私たちは考えている。
もう1つ事例をお伝えしよう。筆者が個人的に支援している音楽スクールでは、YouTubeチャンネルにユーザーニーズの多い楽器演奏のHow to動画をアップし、その動画を自社サービスサイトのページに埋め込んだところ、ターゲットキーワードの検索順位が10位から5位に上昇し、安定した。
動画再生数は3年間で約70万弱、当該サイトに大きな変更などは加えていないしSEOについては全くの素人である。なお、因果関係は不明だが、その音楽スクールのブランド名検索数は1.5倍に伸びていた。
業種業界によって最適なSNSもコンテンツフォーマットも違うし、SNSによってユーザーの行動特性もさまざまなので一概にはいえないが、ポイントは「コンテンツの品質」と「導線設計」であろう。
コンテンツ品質を推し量る指標としてはYouTubeであれば視聴者維持率やコメント数など、Twitterであればリツイート・いいねをはじめとしたエンゲージメント数があげられる。私たちも各SNSで実践しているので、この辺りは別の機会でお伝えしたい。
買わないけど応援してくれるユーザーとも良好な関係を築く
もう1つ重要なポイントに触れておきたい。
「SNSでつながったユーザーを、せっかくならコンバージョンにつなげたい」
「買ってくれないユーザーを相手にするのは無駄だ」
と考えるのはマーケターの性。だが、焦りは禁物である。“買わないけど応援してくれるユーザー”の存在をないがしろにしてはいけない。なぜなら、彼らがコンテンツのデリバリーを促進してくれるからだ。
たとえば、当社faberが運営するYouTubeチャンネルでは毎週2本の動画を投稿しているが、有用だと感じてくれたユーザーが動画をブログに貼り付けてくれたり、SNSで紹介・拡散してくれている。
彼らは当社の商品を買ったわけではないが、当社が発信した情報コンテンツを紹介してくれている。なかには繰り返し紹介してくれるユーザーも相当数いて、保有メディアへの再訪問も多い。これは、「ユーザーとの関係性作りが進んだ≒ファンになってくれた」結果、応援として形に表れたものと考えられる。
そもそもサービスサイトであれオウンドメディアであれ、コンバージョン率はざっくり1%ほどで、買わないユーザーの方が圧倒的に多い。しかしその中に応援してくれるユーザーは存在するはずだし、そのユーザーこそがSNSとSEOとの接点をつなげてくれるのだから、彼らのコメントや感想に耳を傾け、時には交流し、関係性を築きたい(実は3年前、ぐるなび社の伊東周晃氏・現株式会社JADE代表取締役へのインタビューで「読者の意義」をお聞きし、ピンときたのである)。
さらに、こんなこともあるかもしれない。たとえばあるユーザーがメディアで好意的に紹介してくれた結果、それを見た別のユーザーが興味をもってくれてオウンドメディアに訪問。そこで満足な体験を得たことでブランド名を記憶し、後日改めてブランド名検索をしてサービスサイトに訪問 → 購入となる可能性がある。
つまり、次図のAのユーザー行動が無ければ、Bの行動も発生しなかったかもしれないということだ。これもまた、ユーザーとの関係性作りがプラスに働く成果といえよう。
◇◇◇
「2021年 SEOの挑戦課題」では、前編で「ユーザーの検索目的に寄り添うコンテンツ作り(ユーザーの検索目的の仮説立てと検証改善方法)」、後編で「ユーザーとの関係性作り(他チャンネル活用と重要性)」を紹介した。とはいえ、今回触れた内容はSEOで考えるべき内容のほんの一部分だと捉えてもらいたい。
やるべきことは多いが、”ユーザーのために行う施策”が自ずと検索順位の向上に繋がるのであれば、検索エンジンへの訴求ではなくユーザーへの訴求を追求すれば結果はついてくるはずである。
長々とお伝えしたが、2021年はSNSなどの他チャンネルを活用し「ユーザーとの関係性作り」に挑戦してみてほしい。
からの記事と詳細 ( 2021年 SEOの挑戦課題【後編】「ユーザーとの関係性作り」 - Web担当者Forum )
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