多才でいてファッションフリーク、渋谷直角の愛用品からそのセンスを探ってみる──。
仲のいいスタイリストさんが昔言っていたのが、「ニットは無理をしてでも、高くていいものを買いなさい」。やはり高いもののほうが、素材も作りも着心地もぜんぜん違うし、流行にも左右されず、10年20年、毎年おしゃれに着ることができる。高くていいもののほうが、結局コストパフォーマンスがいいのだ、と。
それには自分も強い説得力を感じて、確かに毎年同じものを着ていて、違和感も飽きもこないのってニットくらいだし、自分のワードローブに残っているニットで、いまでも「着よう」と思うのはやはり少々高い値段のやつだけだな、と気づいて。お店でニットを見るときも、値段のタグを「買える値段かどうか」じゃなく、「高いなら(きっといいものだから)買おうかな」みたいな、真逆の見方をするようになりました。とはいえニットの世界も、本当に高級なものは値段も青天井なので、そのスタイリストさんが着ていたニットの値段までは、さすがに勇気が出なくて買えないままですけど(6桁。でも確かにカッコよかった)。
次に買うならタートルネックのニットだな、と思っています。初めてタートルネックのニットを着たとき「大人のファッションを、オレはしている!」なんて、めちゃめちゃ感動しませんでしたか? とにかく冬物に合う合う。タ
ートルネックってだけで、こんなにおしゃれ上級者に見えるのか、なんて。僕は高校生のときに親のお下がりをもらって、それはそんなに高いものではなかったから、ずいぶんと着ましたけど2〜3年でボロボロになってしまい、毛玉もたくさんついて着られなくなって。次のはちょっと値段もがんばって、長く着ることができるものを、と。
そうしたら今度は、「大人らしく、いいニットをオレは着ている!」なんて、高校生のころとはまた違う感動があるんだろうな、と思うとワクワクしてくる。ニット探しに街へ出るのが楽しみです。
Photograph: Tetsuya Niikura(SIGNO)
Styling: Masahiro Tochigi(QUILT)
渋谷直角(しぶや・ちょっかく)
まんが家/コラムニスト。近著に『さよならアメリカ』(扶桑社)、『続デザイナー渋井直人の休日』(文藝春秋)がある。
からの記事と詳細 ( 高いニットを買うべきだというその理由。[渋谷直角 男が憧れる、男の持ち物。] - 朝日新聞デジタル )
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