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Saturday, June 5, 2021

アングル:中国で熱望される牛乳生産拡大、実現には高いハードル - ロイター

[北京 3日 ロイター] - 中国で牛乳の生産拡大が強く求められている。既にじりじりと増え続けてきた需要は、新型コロナウイルスの大流行時に医師らが「牛乳は体に良い」と推奨したことから一層高まり、酪農業界は設備投資に沸いているのだが、そうしたニーズに応じるには高いハードルが存在する。

 6月3日、中国で牛乳の生産拡大が強く求められている。北京で5月21日撮影(2021年 ロイター/Thomas Peter)

もちろん新たに計画されるか、拡張が予定される酪農場に必要な何百万頭もの乳牛を確保するのが難しいからというのも理由の1つだ。

中国の牛乳生産量は世界第3位とはいえ、昨年の3400万トンという生産量は国内需要のおよそ70%しか満たせなかった。問題を複雑にしているのは飼料代が数年来の高値にあるだけでなく、国内に土地と水が不足している点で、同国における牛乳生産コストはかなり割高化している。

コンサルティング会社、北京東方戴瑞によると、過去最高に近い生乳需要や政府の補助金を追い風に、昨年中国で発表された新規酪農場プロジェクトは200件余りに上った。この案件の6割は1万頭の乳牛保有を目指しており、合計でおよそ250万頭と現在中国にいる乳牛頭数のほぼ半分に相当する数を今後数年で増やさなければならないという。

表面的に見れば、年間売上高が620億ドル(約6兆8000億円)前後となる中国の酪農市場は発展の機が熟している。政府は、地方の酪農産業を支援する狙いもあって牛乳とその効用を熱心に宣伝し、消費を促進しつつある。ただそれでもユーロモニター・インターナショナルのデータに基づく1人当たりの年間消費量は6.8リットルと、米国の50リットルに遠く及ばない。

中国現代牧業のガオ・リナ最高経営責任者(CEO)は「1人当たりの平均消費量は依然として非常に低い。(だからこそ)潜在的な成長余地は膨大だ」と述べた。

同氏の話では、中国国民、特に子どもがより多くのチーズを食べ始めたことが牛乳需要を一層増大させる見通し。一般的には、チーズ1キロを製造するのに牛乳10キロが必要だからだ。

一方、中国で牛乳はなお、贈答品にふさわしい特別なものとみなされている側面もある。中国において新鮮な牛乳の価格は1リットル当たりおよそ2ドルと、英国や米国の2倍程度。より普及しているUHT(超高温殺菌法)で処理した常温保存可能な240ミリリットルパックの商品は0.40ドル前後となっている。

ニールセンのデータによると、特に需要が急速に伸びているのはまだ中国の牛乳売上高の2割を占めるだけの新鮮な要冷蔵牛乳で、2020年1-11月に21%販売が増えた。この間、常温保存タイプは10.9%の増加だった。

こうした需要に対応するため、大手業者は比較的裕福な人々が集まる都市部近くにより多くの生乳を供給できる拠点を確保することが不可欠になる。

<輸入制約と飼料問題>

設備増強計画を打ち出した業者の中には現代牧業も含まれ、同社は今後5年間に乳牛頭数を今の2倍の50万頭にしたい考え。その手段は業者の買収や、新たな酪農場の建設だ。

上海に拠点を置く光明乳業は、酪農場を4カ所増やして現在6万6000頭の乳牛頭数に3万1000頭を加えることを目指す。中国優然牧業は新規株式公開(IPO)を計画し、牛の育成と牛乳生産拡大に向けて最大8億ドルを調達しようとしている。

北京東方戴瑞の調べでは、既に合計で135万頭が必要な新規酪農場の建設が始まっているものの、その一部は完成してもしばらく牛舎が空のままだろう。

同社が見積もる今後2年間に中国で産まれる若い雌牛はおよそ50万頭で、輸入される若い雌牛は昨年と同じペースなら40万頭になる可能性がある。中国は昨年、主にオーストラリアとニュージーランドから約20万頭を輸入した。

若い雌牛を輸入するのは、新規酪農場が頭数を確保する最も手っ取り早い方法で、自前で育成するより1年ほど期間が短い。中国産の牛に出回っている多くの病気も、輸入牛なら無縁という点も好まれている。

ただそこに影を落としているのが4月、生きている牛の輸出を2年以内に停止するとしたニュージーランドの決定だ。これは長期間の輸送で牛が苦しい思いをするのを懸念したためだった。

チリとウルグアイも幾らか牛を輸出しているが、輸送期間は2倍かかる上に、繁殖に使われたため搾乳できる量が少なくなり、あまり魅力的な選択肢にはならない。

北京東方戴瑞のチーフエコノミスト、ドウ・ミン氏は、米国や欧州諸国も繁殖用牛の輸入元には十分なり得ると指摘した。

実際、中国と米国は20年1月、第1段階の通商合意に基づいて繁殖用牛の輸入協議を1カ月以内に開始すると表明。しかし果たして協議が始まったのかどうか今もって定かではない。

専門家や業界関係者が別のハードルとして挙げたのが飼料の高騰。輸入した若い雌牛が乳牛として役に立つまでしばらく時間がかかるからだ。

中国に飼料を供給しているランド・オー・レークスの中国マネジャー、グラント・ビードルズ氏は、トウモロコシ価格は過去最高水準にあり、干し草や牧草もトウモロコシと作付けで競合することからより高値になりそうだと述べた。

(Dominique Patton記者)

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