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Thursday, June 17, 2021

米露首脳会談 関係改善への小さな一歩だ - 読売新聞

 冷戦後最悪と言われる関係の改善は、容易ではない。対話を積み重ねて協力できる分野を見いだし、相互の信頼を築き直すことが重要である。

 スイスのジュネーブで、米国のバイデン大統領が就任後初めて、ロシアのプーチン大統領との首脳会談を行った。

 ここ数年、ロシアは米大統領選への介入やサイバー攻撃で揺さぶりをかけ、米国は制裁強化で応酬してきた。関係悪化は、国際政治の不安定化を招いている。

 両首脳は、「予測可能で安定した関係」をともに追求する点では一致した。互いの意図を把握し、見解の相違を直接確認しただけでも、顔をあわせて会談した意義はあったといえる。

 核軍縮では、将来の軍備管理のあり方を協議する「戦略的安定対話」を始めることで合意した。

 米露の核軍縮の枠組みは、長射程の核兵器の弾頭と運搬手段を制限する新戦略兵器削減条約(新START)しか残っていない。

 今年2月に期限が5年間延長されたが、新たな条約の批准手続きなどに必要な時間を考えれば、今から準備を始めるのは妥当だ。

 世界の核弾頭の9割を保持する米露には、核軍縮を主導する責務がある。短・中距離の核戦力も含めた包括的な枠組みを目指し、急速に軍備を拡大する中国も協議に引き入れていかねばならない。

 米露対立が最も先鋭化しているサイバー安全保障の問題については、専門家レベルの協議体を設置することが決まった。

 サイバー攻撃は、パイプラインや電力網などの基幹インフラを標的とするものから、軍事情報などの収集、「身代金」目的の企業システムへの侵入まで、幅広い。実行者の特定が困難なこともあり、国際ルール作りは遅れている。

 協議体が規範の構築に寄与するなら歓迎できるが、プーチン氏はロシアのサイバー攻撃への関与を全面否定している。建設的な協議になるかどうかは不透明だ。

 バイデン氏は、サイバー攻撃を加えてはならないとするインフラなど16分野のリストをプーチン氏に渡し、攻撃を受けた場合は「相応の措置をとる」と警告した。ロシアが自制に動かなければ、関係改善の流れは消えるだろう。

 ロシアの反政権活動家弾圧や、ウクライナへの軍事的威圧では、議論は平行線をたどった。

 プーチン氏は、ロシアが米国と対等の大国として扱われることを求めるのなら、まず国際ルールや人権を尊重すべきだ。

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