ブリンケン米国務長官はバイデン政権発足以来初となる外遊先として16~18日にかけ日韓両国を訪問、両国外相らとの会談に乗り出す。これは明らかに、バイデン大統領の直接指示に基づくものであり、1965年国交正常化以来「最悪」とされる日韓関係打開に向けた“お膳立て”を意図したものとみられる。
(Oleksii Liskonih/gettyimages)
今回、米国務省詰めの米人ジャーナリストの多くは、ブリンケン長官が就任早々に、日韓両国訪問を決めたことを「大きな驚きと意外感」を持って受け止めた。なぜなら、これまで平時において歴代政権発足後、国務長官の最初の歴訪先は歴史的、地理的にも密接な関係にあるNATO(北大西洋条約機構)諸国が最優先とされてきたからだ。今回も、国務省が日程を正式発表する直前まで、ほとんどの米メディアが「国務長官が3月中にも欧州歴訪、その後にアジア諸国か」といった観測記事を流していた。
従って、いきなり「日韓両国訪問」はアメリカの外交常識を破るものと言ってもいい。
さらに加藤官房長官は12日、菅首相が「来月上旬、ワシントンを訪問、日米首脳会談を行う」と発表した。バイデン大統領が就任以来、直接対面の形で世界の指導者の中では、最初に日本の首相との会談に応じるのも異例中の異例だ。
米国務省報道官は去る10日、ブリンケン長官の外遊について声明を発表、「今月15-18日にかけて日韓両国を訪問」を確認した上で、その目的について「両国との同盟関係強化に向けてのアメリカのコミットメントを再確認するとともに、インド太平洋地域及び世界全体の平和、安全保障そして繁栄促進の意義を強調するため」と述べた。そしてより具体的に「茂木外相とは、2国間およびグローバルな諸問題を協議するほか、長官が司会役となりリモート形式で日本のジャーナリストたちとの座談会を行い、『日米同盟の将来』について討論する。韓国では鄭外相と2国間およびグローバルな諸問題を協議するほか、長官が司会役でリーモート形式で韓国のジャーナリストたちとインド太平洋および世界における平和、安全保障、繁栄促進に向けた『米韓同盟の重要性』について意見交換する」と付け加えた。
しかし、この公式発表文を読む限り、今回ブリンケン長官訪日、訪韓のいずれにおいても、世界のどの国よりも最優先させた緊急性は見受けられない。
では、真意はどこにあるのか?
結論から先に言えば、米国が今後「最も深刻なライバル」と位置付ける中国と向き合うため、バイデン大統領自身が、いずれも米国の同盟国でありながら冷却状態にある日韓両国間の関係修復を急務とみなしているからにほかならない。ブリンケン長官が日韓両国のジャーナリストたちとの座談会を通じ「日米同盟の将来」「米韓同盟の重要性」について意見交換することにしたのは、まさにその糸口を探ろうとするものだ。
そしてこれを受けた形で、大統領は来月上旬、間髪を入れず、菅首相をホワイトハウスに招き入れることにしたのも、安倍首相時代に悪化した日韓関係について、菅首相に交代したのを機会に、率直に意見交換し、日韓関係仕切り直しの可能性を探る意図があるとみられる。この首脳会談の場で、菅首相と文在寅韓国大統領との直接会談を促すことも十分考えられる。
実は、外交問題を得意とするバイデン氏は副大統領時代から、困難な状況にある諸外国間の関係改善のためには首脳同士が直接向き合うことが不可欠であり、そのために必要であればホワイトハウスも後押しするとの信念を個人的に抱いてきた。いわゆる「バイデン・ドクトリン」の一角をなすものだ。(この「バイデン・ドクトリン」については、すでに本欄1月21日付、拙稿「『バイデン・ドクトリン』とは何か」で述べた)
そしてバイデン氏は具体的に、2016年8月、米有力誌「The Atlantic」との独占インタビューの中で、①オバマ政権下の副大統領として自らが当時、険悪な関係にあったイスラエルのネタニヤフ、トルコのエルドアン両国首脳に直接働きかけ、その後両国関係が好転した②冷え込んだ関係にあった日韓関係でも両国首脳に改善を呼びかけた③イラク、ウクライナなどの関係においても直接首脳に働きかけ、局面打開を図った―などの具体例を挙げ、仲介役としての意義を強調してきた。
このうち、「日韓関係改善」については、バイデン氏は去る2013年10月、インドネシア・バリ島で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の場で、安倍首相、朴槿恵韓国大統領(いずれも当時)の日韓両首脳が30秒足らず言葉を交わしただけでその後口も利かないまま別れるという冷え切った関係だったことを懸念「(バイデン氏が後押しした結果)その後は、安倍首相が訪韓し、朴槿恵大統領も訪日に向けて動き出した」ことにも言及している。
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