
18億~8億年前、生命進化の停滞や海の貧栄養化の原因の可能性
もしもあなたが10億年前の地球を探検できたとしたら、目を引くものがないことに驚いただろう。樹木や昆虫をはじめ、空を見上げても鳥もいない。生きものは、どろりとした原始の海のスープに浮かぶ単純な微生物だけだった。 ギャラリー:まるで異世界、地球とは思えない風景 10選 このほど2月12日付けで学術誌「サイエンス」に発表された新しい研究により、当時の地球になかった可能性のあるものが、もう1つ加わった。高くそびえる山々だ。 今日の地球の表面を覆うプレートは常に移動し、そのスローモーションのダンスは表面の地形を作り出している。大陸どうしが衝突すると地殻は厚くなり、ヒマラヤのような山脈が隆起し、空に向かって成長していく。 しかし、地下深くで形成された鉱物の一種ジルコンに刻まれた手がかりは、当時のプレートが今日のように常に動いていたわけではなかったことを示唆している。18億~8億年前にかけての「退屈な10億年」と呼ばれる時代に、大陸の地殻はどんどん薄くなっていったようだ。 薄くなった地殻は、「退屈な10億年」に生命の進化が停滞した原因かもしれないとも論文は指摘する。山々の成長が止まったことで岩石の侵食ペースがゆっくりになり、海の生きものたちへの栄養素の供給が減ったと考えられるからだ。 「当時の海は飢餓状態でした」と、今回の論文の筆頭著者で、中国、北京大学の地球化学者のミン・タン氏は言う。しかし、大陸が再び厚くなりはじめると、すぐにまた大量の栄養素が海に流れ込むようになり、より大きく、より複雑な生物への進化を促したようだ。 「この論文は答えよりも疑問を多くもたらしています」と、プレートテクトニクスを専門とするカナダ、クイーンズ大学の地球化学者クリストファー・スペンサー氏は言う。とはいえ全体的には、今の世界がどのようにして誕生したのかをよりよく理解するための「足場」になるかもしれないと評価する。
小さなタイムカプセル、鉱物ジルコン
タン氏は、チベット南部のヒマラヤ山脈の花崗岩を分析していたときに、その中に含まれるジルコンの不思議なパターンに気がついた。ジルコン結晶の化学的性質が、その結晶を取り囲む岩石が形成された時代の大陸地殻の厚みに応じて変化していたのだ。 ジルコンは地球の内部でマグマが冷えるときに形成される鉱物で、古代の地球の化学的状態を記録する小さなタイムカプセルになっている。この鉱物はほとんど壊れることがなく、地球が誕生して間もない時期に形成された44億年前のものまで見つかっている。 タン氏によれば、科学者たちはこれまで岩石に含まれるランタンとイッテルビウムという希土類元素(レアアース)の相対的な量を見て、大陸地殻の厚みを判断していた。しかし、地球が誕生した頃の岩石は今ではほとんど残っていない。そのため、岩石を使って地球の古い過去を調べるのは難しく、地質史には大きな空白がある。 「地質史の研究は、ページの4分の3が失われた小説を読むようなものだと言われています」と、オーストラリア、モナシュ大学の地質学者ピーター・カーウッド氏は言う。しかし、ほぼ永遠に変化しないジルコンは、地球の太古の物語の一端を明らかにしてくれる。なお、氏は今回の研究には参加していない。 タン氏のチームは、ジルコンを使って大陸地殻の厚みを推定する新しい方法を開発した。彼らは、ジルコン結晶に含まれるユウロピウムという希土類元素の量が、従来の岩石化学的手法で測定された大陸地殻の厚みと連動していることを発見した。 タン氏らは2020年9月4日付けで学術誌「Geology」にこのモデルを発表し、さっそく使いはじめた。彼らは、これまでに調べられた1万4000点以上のジルコンのデータを世界中から収集し、その化学的性質が時間とともにどのように変化するかをプロットした。その結果、「退屈な10億年」の間に地殻がどんどん薄くなっていく、驚くようなパターンが浮かび上がってきたのだ。 タン氏はこのパターンを「まったく予想していませんでした」と言う。その期間は、これまでにわかっていた、古代の造山運動の指標が消える時期にも重なっていた。侵食と関連するストロンチウムの組成は大きく変化し、海の岩石からはモリブデンとウランがほとんど姿を消していた。リンを豊富に含む岩石もほとんどなくなっていた。 「これらの変化は、大陸地殻がもっと薄かったとする私たちのモデルによって説明できます」とタン氏は言う。
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