【ワシントン】ドナルド・トランプ米大統領は再選に向けて全米を飛び回る中、マスク着用の有効性に疑問を投げかけ、大規模な選挙集会による新型コロナウイルス感染拡大のリスクを軽視してきた。
専門家の助言に耳を傾けないトランプ氏のこうした姿勢は、ホワイトハウスや陣営内にも見て取れる。定期的にマスクを着用するスタッフはほとんどおらず、ソーシャルディスタンス(対人距離の確保)も守られていない。事情に詳しい関係筋が明らかにした。
政権・陣営関係者の間では、トランプ大統領夫妻の感染が判明する直前までこうした態度が続いていた。1日にはニュージャージー州で支援者とのラウンドテーブルや選挙資金集めのイベントが開催されたが、あるホワイトハウス関係者によると、政権関係者はそれ以前の段階で、トランプ氏の側近であるホープ・ヒックス氏がコロナに感染していることを認識していた。
だが、それでもトランプ氏はイベントに出席した。ホワイトハウスのケイリー・マクナニー報道官は2日、政権内の担当スタッフが他の高官とも相談の結果、トランプ氏の参加を承認したと説明した。
取材する記者らは政権スタッフがマスクをしないまま、近距離で集まっている様子を度々目撃している。ホワイトハウス内のマスク着用者は、報道関係者のみという場合も多い。一部のスタッフがクローゼットのような狭い空間に押し込まれているホワイトハウス西棟の迷路のような廊下では、対人距離を確保することはほぼ不可能な状況だ。エアフォースワン(大統領専用機)や選挙集会の会場でも、スタッフはめったにマスクを着けない。
ホワイトハウス内で頻繁にコロナ検査が行われていることが、一部で安心感につながっているようだ。マーク・メドウズ大統領首席補佐官は2日、自身は検査で陰性だったと記者に語る際、マスクを着けていなかった。だが専門家らは、検査でウイルスが検知されるまでには数日を要する可能性があるとして警告している。
ホワイトハウスは6月、敷地内への入場者全員に課していた定期検温の実施を取りやめた。コロナのパンデミック(世界的な大流行)以降、マイク・ペンス副大統領の側近やロバート・オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)など、複数のホワイトハウス関係者がコロナに感染している。
トランプ氏はこれまで、自身や周辺スタッフは検査を受けているため、マスクを着用する必要はないとの立場を維持してきた。だが、トランプ氏とやり取りのあるスタッフしか頻繁には検査されておらず、ホワイトハウス内で勤務する数百人のスタッフは危険な状況に置かれている。
トランプ氏は、遊説先の州・地方自治体の当局者からウイルスを拡散しかねないとの警告を受けていたにもかかわらず、過密スケジュールで集会を続けてきた。感染が判明する前には、3日にもウィスコンシン州2カ所で集会の開催を予定。コロナ感染者の急増を受けてイベントを中止するよう民主党の同州知事が要請していたが、聞き入れていなかった。
トランプ陣営は1日(コロナ検査前の段階)、集会場所の1つは感染者が少ないウィスコンシン州内の別の場所に移すとしたが、グリーン・ベイで予定されている集会は変更しない考えを示していた。グリーン・ベイは、政権のコロナ作業部会が感染急増で「レッドゾーン(危険地帯)」に指定していた地域だ。トランプ氏は向こう数日間にフロリダ州やアリゾナ州でも集会を計画していたが、コロナ感染を受けて、陣営では延期かネット経由での実施に切り替えるとしている。コロナ検査で陰性が確認されたペンス副大統領は選挙活動を続ける。
トランプ氏の集会は、大半は屋外の空港格納庫で開催されているが、最近ではネバダ州で屋内のイベントを開催。同州の対人距離確保の規定を無視したため、民主党の州知事から強い非難を浴びていた。トランプ陣営は参加者にマスクを配布しているが、着用は義務づけておらず、会場内で着用している参加者はほとんどいない。トランプ氏は6月にも、オクラホマ州タルサで屋内のイベントを開催しており、地元の保健当局者は後日、集会とこれに伴う抗議デモが同地域のコロナ感染増加に「寄与した可能性が高い」との見方を示していた。トランプ陣営内でも同イベントに参加した複数の関係者がその後、コロナ検査で陽性が判明した。
トランプ氏は、9月29日夜に開催された大統領選の初回テレビ討論会でも、マスク着用は構わないとしながらも、公の場で常にマスクを着用しているバイデン氏をからかう発言を行っていた。
トランプ氏は「必要ならマスクを着用するが、彼(バイデン氏)のようには着けたくない」と指摘。「彼はいつでもマスクを着用している。私と200フィート(約60メートル)離れて話すことができるのに、これまで私が見た中で一番大きなマスクを着用して現れた」などと述べていた。
討論会の会場内ではマスク着用が義務づけられていたにもかかわらず、メラニア夫人を含め、トランプ氏の家族らは、観客席に着席するとマスクを外した。これにはトランプ氏の娘と息子4人(イバンカ、ドナルド・ジュニア、エリック、ティファニー各氏)が含まれており、全員がマスクを着けずに観客席の最前列に座っていた。
白衣を着た医師がトランプ一家に近寄り、マスク着用のルールについて再度説明し、持ってなければ配布するとも伝えたが断られた。討論会のスタッフは医師に対し、「あなたができるのはここまで」と話した。これに対し、バイデン氏の関係者は、夫人のジル・バイデン氏を含め、討論会の間は常にマスクを着用していた。
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October 03, 2020 at 08:56AM
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