―著書にこのテーマを選んだ理由は。
「私は医師として約45年間、がん患者さんと向き合ってきた中で、告知のあり方の見直しが必要だと感じている。国際的にみても、日本はがんによる自殺率が高い。学界などでは大きな問題として取り上げられるべきだ」
「日本人は欧米人に比べて鬱(うつ)になりやすい。精神的にデリケートな日本人に対する告知は、ケース・バイ・ケースで対応するべきだ。人間は本質的に弱いものだが、希望があるから生きていけることを知るべきだ。米国式医療が日本では主流だが、すべてを日本に当てはめるのは無理がある」
―医師はどんな対応と知識が必要ですか。
「特に患者さんと接点の多い内科医はコミュニケーション能力が必要だ。また、治療の面でも有効になる。名医と言われる医師は、その8割が患者の話を聞いただけで病名や適切な治療法がわかるという。医大では臨床に向けた授業を急ぐ傾向があるが、心理学など文系の学習も重視すべきだ。治療法は、だいたい確立してきた。人工知能(AI)の活用で治療は、さらに進化・進歩するだろう。まずは信頼関係が最優先だ。そうでなければ患者は担当医に命を預けられるはずがない」
―留学経験でどんなことを感じましたか。
「私は米国に4年間留学した。米国式がん告知には賛同できない面もあるが、チーム医療は優れていると思う。米国では、まず身近なファミリードクターが病気を発見する。治療は専門医の担当だが、ひとりの患者のために手術する外科医、検査の放射線科医のほか、心のケアを担当する心理療法士、ナースなどさまざまな専門家がチームを組む。分業が完全に確立。チームで最適な治療法やケアなどについて絶えず話し合う環境もできている。家族の精神面もカバーする。日本の医療現場は“3分、5分治療”と言われるくらい医師は多忙。増加する医療費の問題もありチーム医療の導入は難しいのかもしれないが、現状が少しでも変わることを期待したい」
―家族も苦しんでいます。
「がんが明らかになることで家族の関係がみえてくる。また家族全員が心配するような環境にある患者は治りやすいようだ。がんを患うと患者は鬱になりやすくなり、孤独で不安が一杯になる。家族が寄り添うことで穏やかな気持ちになり、家族の絆を取り戻すことが多い」
「私は、父をがんで亡くした。助けられなかったという無念さもある。祖父、叔父もがんで亡くなった。つまり、私の家系は“がん家系”ということになる。私自身、いつ患者となるのか不安だ。このことも、がん治療にかかわるきっかけになったのかもしれない。この本も医師としてだけではなく、患者としての自分にも言い聞かせている面がある。ただ、がんはたいへん難しい病だけに、治った時の達成感も大きい。私の誇りは、亡くなった患者の家族からも感謝されることだ。これからも、いちるの望みがあれば患者に寄り添いたい」
(聞き手・山下哲二)水上治(みずかみ・おさむ)氏 健康増進クリニック院長。73年(昭48)弘前大学医学部卒、同年北品川総合病院で内科勤務。85年東京医科歯科大学付属難治疾病研究所で医学博士号を取得。94年米ロマリンダ大院で公衆衛生学博士号を取得。01年東京衛生病院健康増進部長に就任。07年健康増進クリニック院長に就任。最新著者は『日本人に合ったがん医療を求めて』。北海道出身、72歳。
日刊工業新聞2020年2月24日
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