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Thursday, September 23, 2021

EUの新戦略 対中関係の修正に動き出した - 読売新聞

 欧州連合(EU)が中国との関係を見直し、インド太平洋地域への関与を強める契機となるか。日米の戦略との共通点や温度差を見極め、今後の動向を注視する必要がある。

 EUが初めて「インド太平洋戦略」を策定した。この地域が国際秩序の鍵を握るという認識に立って、地域の国々や東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係強化を図る意思を表明した。

 EUの中では、フランスやドイツがすでに独自のインド太平洋政策を打ち出しているが、27加盟国からなるEUが一致して方向性を示した意義は大きい。

 戦略は、インド太平洋地域との緊密な貿易・投資関係の構築を優先課題としている。具体的目標として、オーストラリアやインドなどとの経済協定の締結を挙げた。地域の成長を取り込んで、EUの発展につなげたいのだろう。

 半導体の供給網の強化に向け、日韓両国に加え、台湾との協力も明記した。中国への依存度を弱め、供給網の多様化を目指す狙いは、日米の戦略とも通じている。

 EUにとって中国は最大の貿易相手国であり、対中経済関係を重視する姿勢が目立っていた。だが、中国の新疆ウイグル自治区や香港での人権弾圧により、従来の政策の見直しを迫られている。

 今回の戦略は、「インド太平洋地域で、民主主義的な原則が権威主義的な体制によって脅かされている」と指摘した。航行の自由や法の支配を求める立場も強調している。名指しはしていないが、中国を 牽制けんせい する意図は明確だ。

 人工知能(AI)を使った中国の監視技術を念頭に、日本、韓国、シンガポールに対して、人権に配慮した先端技術利用の基準作りでの協力も呼びかけた。中国に主導権を握らせないという思惑が込められているのだろう。

 ただ、EUの対中姿勢は米国ほど強硬ではない。欧州議会が批准作業を中断している中国との投資協定については、発効を目指すという基本姿勢を確認した。

 インド太平洋地域の海洋秩序の維持に向けては、EU加盟国による「海軍の展開の水準を上げる」という表現にとどまっている。EUが独自の軍を持たない以上、安全保障面での貢献には限界があると言わざるを得ない。

 オランダ海軍は艦船を英空母に同行させ、自衛隊との合同訓練に参加した。ドイツの艦船も日本に向かっている。日米などは、こうした個別の活動での協力を通じてEUとの連携を深めたい。

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